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レンジャーたちと怪人の戦い、そしてそれに続く巨大化怪人対合体ロボの激しい戦いの末、今日も悪は倒され、人々の平和が守られた。幹部は捨て台詞を吐いて姿を消し、イロレンジャーたちも次の週まで、束の間の日常を楽しむのだ。
しかしながらイログリーンこと緑川大地は、基地へと帰る道すがら、車中にて独り溜め息をついていた。
(……僕……、必要かな……? 五人の時からそうだったけど、追加の二人が入ってからというもの、ますます影が薄くなる……。酷い時には、それをネタにしていじられるし。パワーも僕は植物を操るだけで、一番弱い。筑紫さんの雷とか、友広の炎は言うに及ばず、愛ちゃんのパワー、要するに財力とかだって、僕よりよっぽど役に立ってる。マシンだって僕はただのランドクルーザーで、合体したら左足だし。それに……)
マシンのモニター越しに談笑する他のメンバーの顔を見ながら、彼は思った。
(分からない……。分からなくなったんだ……。みんなの『正義』っていうものが……。そりゃあブラックピラミッドの破壊行為や犯罪活動は、放っておくわけにはいかない。けど、みんなから垣間見えるちょっとした言動を、深いとこまで考えていくと……。分からなくなる。本当に僕は、みんなと一緒に戦いたいのか……。この戦いを、続けていってもいいのか……)
「ところでさあ! もう十二月だな! クリスマスだ!」
「追加ロボの人気も上々だし、結構儲かるわよ!」
他のメンバーが楽しそうに喋っている。
「クリスマスはみんなで基地でパーティーだよね! チキンとケーキ、山ほど買ってさ!」
「いいねいいね! みんなオーケーだよなッ? えーっと、大地、参加するよな、クリスマスパーティー!」
赤木友広に尋ねられて、大地は面食らいつつ考える。
(えーっと……、クリスマス? まあ、いいけど……。あっ、いやいや、良くないっ。だってもう、十二月なんだぞっ……! 僕は未だに……)
「出るよね、大地君ッ。全員集まらなくっちゃ盛り上がらないよ!」
「え……、ああ、その、僕……」
「オッケーだよなッ! 多数決多数決ッ! 今から楽しみだな~ッ!」
明るく笑うメンバーたちの声を聞きながら、大地は顔を引きつらせていた。
(強制参加っ? 無理だよ、パーティーなんて……! そうだ、それこそ僕が悩んでる、もう一つの理由……。だって僕はもう、大学四年の十二月だっていうのに……。未だに就活、終わってないんだからっ……!)
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