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「……何をしている時が、一番楽しい……? あなたが時間を忘れて、不安もストレスも忘れて、子供のように夢中になっているのは、どんな時……?」
ここへ来て進路相談のような問いに、大地は戸惑いながらも頭を巡らせる。
「……僕が、夢中に……。時間を忘れて……。そうだな……。そう……、基地の花や植木の世話をしてる時とか……、実家で庭いじりや畑の手伝いをしてた時は、日が暮れるまで気付かずやってたな……」
清美は優しく微笑んで言う。
「フフッ……、素敵じゃない。他には……?」
「他には……」
と、ここで大地は自らの胸の内で、何かがみるみる大きく膨れ上がるのを感じた。彼はマスクを解除して素顔を見せると、改めて清美の手を握り締め、その目をじっと見つめてこう言った。
「……君の事を、考えている時です。この数週間、僕の頭の中は、ほとんど君だけだった。不安もストレスも半端じゃなかった。けど、僕は文字通り夢中だった……!」
化野清美は目を見開く。大地は言った。
「君が好きだ。僕と一緒に、ここから逃げ出そうッ……! 他人に合わせたりっ、正義だの悪だの頭で考えるのはもうウンザリだっ! 二人ならッ……! 僕たち二人ならッ、追手をかわして逃げ切れるさっ!」
清美の目から、一筋の涙がこぼれ、邪悪な化粧は瞬く間に消え去った。
「嬉しい……。今は私も、あなたと同じように思う……。あなたと一緒に、戦いも争いも忘れて生きていきたい。でも……」
彼女は向こうで地響きを上げながら戦っている、巨大化したカバの怪人と、左足抜きの合体ロボを見上げて言った。
「いったい、どうするの……?」
「北に逃げようっ! 北海道にでも行って、二人で農家になって暮らすんだ! 僕は植物を自在に操れる。すぐにやっていけるようになるさッ!」
「そうじゃなくてっ……。ベヒモスはもうエネルギー切れで敗北間近……。あなたの仲間だって、あなたが裏切ったら追ってくるんじゃない? 本当にわたしたちを許してくれるの? ブラックピラミッドの方だって、事態に気付けばエボニーやガンメタルやチャコールがやってくる。いったい、どうすれば……」
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