プロローグ

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プロローグ

「カ、カナタが悪いんだからね……? カナタが…………カナタが私を裏切ったりするから! こうなったのも全部カナタが悪いんだから!」 「がはっ……!」  赤毛のショートヘアーが似合う女子高生兼幼馴染みの三雲永遠。  いつもは天真爛漫で誰よりも優しい彼女の顔は今、嫉妬で歪んでいる。  そして俺の心臓には一振の包丁が深々と突き刺さっている。  自分の家の玄関で。  まさかは、がっつり人殺しとは恐れ入る。  どうやら四度目のルートは今までの比ではない間違った選択をしていたらしい。   「ぐ…………うぅ!」  そんな下らない事を、死の間際に考えていた俺は膝から崩れ落ち横たわる。  胸元が酷く痛み、熱い。  まるで血液が沸騰しているかのようだ。  ああ、この感覚も何度目だろうか。  流石に死ぬのにも慣れてきたな、四回も死ねば。  最初は死ぬほど痛かった胸元も、燃えたぎる熱量を放つ血液も段々と感じなくなり、身体も冷えてきた。  まあ包丁を引き抜かれたせいでこんだけ血液がドバトバと流れ、玄関を赤い海にするぐらい流血したらそりゃあそうか。 「あはははははは! あははははは!」  頭上から狂喜的な笑い声が木霊してきた。  永遠が笑っているのだろう、俺が死ぬ様を見て。  ……いや、違う。  壊れてしまったんだ、彼女は。  本当は心の弱かった永遠は俺のせいで壊れてしまったのだ。  そしてこうなってしまった以上、結末は決まっている。 「はははははは! …………ふう。 それじゃあ私もそろそろ逝くね、カナタ。 あの世では私だけを見てね? 愛してね、愛を囁いてね? 約束だよ? ふふふ…………ふひひひひひ! ……………が………………かふ……………………」  自分の喉元を、包丁で突き刺したのだろう。  一瞬断末魔を上げた永遠だったが、まるで動かぬ人形のように俺の真横に倒れ、絶命した。  彼女の顔は歪んでいる。   笑顔だが、酷く醜く歪んでいる。  人間、常軌を逸するとこうなってしまうのかと思うとゾッとしないな。  と、考えていたのも束の間。  どうやら今回の人生に終幕が来たらしい。   「うあ…………がほっ! げほっ!」  咳き込むと血の塊が口から這い出てきた。  ようやく俺の肉体は限界を迎えたらしく、段々と視界が暗くなり、指先まであった感覚は無くなった。  そして意識までもが……。  俺はその意識が無くなるまでの間、繰り返し頭の中でこんな決意を固めた。  次こそは…………次こそは、永遠を救って見せる、必ず…………と。
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