テセウスの犬

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 ぼくは、ぼく自身(じしん)がきらいだった。ぼくの(かお)、ぼくのかみの()、ぼくの(くち)、ぼくの(くち)から()てくる(こえ)、そのかぼそい(こえ)があらわすぼくのくらい表情(ひょうじょう)、そしてぼくをくらい(かん)じにつくってしまったのろわれた()まれそのものがにくったらしく(おも)えてしかたなかった。  にくったらしいと(おも)えば(おも)うほど、ぼくのからだも(こころ)もうすよごれていくのを(かん)じる。ぼくの(こえ)も、どんどんとしゃがれていって、ついにはなかなか(こえ)()せなくなってしまった。ぼくの表情(ひょうじょう)はもう(いま)にも()きだしそうで、それでもだれかから()たらくしゃくしゃな笑顔(えがお)()えなくもない。  こんなぼくを(あい)してくれる()はまだいるだろうか?  こんなぼくをいまだに大切(たいせつ)にあつかってくれる()はいるだろうか?
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