7人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
ゴミ袋の女子高生
「あれ?」
「どうしたんだよ、一樹」
「いや、今、宮原さんがいたような……」
ようやく期末試験が終わったので、今日はクラスメイトとカラオケを楽しみ、日付が変わる前に帰ろうとしているところだった。
「宮原がこんなところいるわけないだろ」
「あいつは引きこもりだからな」
「今日も誘ったのに、断りやがったし」
クラスの男子が口々に言う。
宮原はおとなしい女子だ。学校ではほとんどしゃべることなく過ごし、授業が終わるとすぐに帰ってしまう。メガネをかけたシュートヘアで、見た目は文学少女という感じだった。
引きこもりというのは、学校に来てないわけではなく、殻に閉じこもって誰ともコミュニケーションを取らないという比喩だった。おそらく放課後は部活や遊びをせず、家にひきこもっているのだ。
一樹はそんな宮原が夜の街を歩いているのを目撃していた。
「ごめん。俺、ちょっと用事思い出して」
そう言うと一樹は一団を抜け出して、宮原が消えていったほうへ行ってしまう。
「一樹、宮原に気があったのか?」
「冗談言うなよ。顔は悪くねえけど、あの宮原だぞ」
「何考えてるか分かんないから、怖えんだよな」
一樹も夜にクラスの女子を見かけたぐらいで、あとを追いかけたりしなかっただろう。
しかし、彼女はあまりにも異様だった。
セーラー服を着た女子高生が、中身がいっぱいに詰まった黒いゴミ袋を両手に持ち、深夜の繁華街を歩いていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!