プロローグ:とある冬の日の風景

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「そっか、今日はあの日の夕方とそっくりな色なんだね」  こくりと頷くうつむき加減のあやめの表情は、長い黒髪に隠されて伺い知れない。だけど、セーラー襟から覗くうなじがほんのりと紅く染まっていた。あ、なるほど。今日はお腹すいてるんじゃないのね。 「じゃあさ、今日の御社さまのお世話一緒にやってよ。  そしたら今日やってあげてもいいよ」 「いやよ、ここの部員でもない私が手伝う理由がないわ」  あたしのお願いをすっぱりと断るあやめ。この時間に外に出るのを嫌がるのは知っているから別に驚かない。でも、あたしはあの子にうんと言わせる言葉を用意していた。自然と頬が上がって意地の悪い顔になってるのが自分でもわかる。 「いいのかなー?  今から二人でやれば、ちょうどあの時間に間に合うと思うよ?  あたし今日は、あの時みたいに屋上でしてあげたいんだけど」 「透子、ふたりでやろう。私、先に行ってるから早く来てね!」  ほら、こうかはばつぐんだ。  パイプ椅子を跳ね飛ばす勢いで立ち上がって、パタパタと部室を出ていくあやめ。 「あたし、掃除道具もってくから遅れるよー」  あやめには聞こえていないだろうけど、いちおう声を書けておく。山の端に太陽が差し掛かって濃い赤に世界をどんどん染めていく。
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