8人が本棚に入れています
本棚に追加
「そっか、今日はあの日の夕方とそっくりな色なんだね」
こくりと頷くうつむき加減のあやめの表情は、長い黒髪に隠されて伺い知れない。だけど、セーラー襟から覗くうなじがほんのりと紅く染まっていた。あ、なるほど。今日はお腹すいてるんじゃないのね。
「じゃあさ、今日の御社さまのお世話一緒にやってよ。
そしたら今日やってあげてもいいよ」
「いやよ、ここの部員でもない私が手伝う理由がないわ」
あたしのお願いをすっぱりと断るあやめ。この時間に外に出るのを嫌がるのは知っているから別に驚かない。でも、あたしはあの子にうんと言わせる言葉を用意していた。自然と頬が上がって意地の悪い顔になってるのが自分でもわかる。
「いいのかなー?
今から二人でやれば、ちょうどあの時間に間に合うと思うよ?
あたし今日は、あの時みたいに屋上でしてあげたいんだけど」
「透子、ふたりでやろう。私、先に行ってるから早く来てね!」
ほら、こうかはばつぐんだ。
パイプ椅子を跳ね飛ばす勢いで立ち上がって、パタパタと部室を出ていくあやめ。
「あたし、掃除道具もってくから遅れるよー」
あやめには聞こえていないだろうけど、いちおう声を書けておく。山の端に太陽が差し掛かって濃い赤に世界をどんどん染めていく。
最初のコメントを投稿しよう!