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1章-1節:夕焼けなんて大きらい
私、 鬼頭 あやめが通っている県立高校、 御社高等学校は特筆すべきもののない高校だ。取り立てて部活や生徒活動が活発なわけでもなく、さりとて勉学もそれほど振るわない。唯一特徴があるとすれば私が立っているこの場所だろう。
(いつまで待っていればいいのかしら)
校名の由来になった小さな御社は屋上の片隅に祀られている。私はその大きさに見合った小さな鳥居の前に立っていた。下校時刻はもうとっくに過ぎていて、いつもの私であればとうに家について部屋着に着替えている、そんな時間。鳥居の朱塗りが溶け出したかのように、夕日がそこかしこを染めあげている。
(夕方は嫌い。世界が朱に染まるから、大嫌い)
手をかざして山の端に隠れようとしている太陽を遮った。横合いから照りつける冬場の夕日が眩しかったから、そういうことにしておく。今日は特に朱が強い気がする。こんな日はさっさと家に帰ってカーテンを締め切ってこもってしまいたいのに。手の中のノートの切れ端を私はくしゃりと握りつぶした。
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