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――目を開くと、いつものベッドの上だった。真っ先に自分の手を見る。人の手だ。目線も、いつもと同じ。 先ほどまでのは、夢、だったのだろう。ほっと胸をなでおろす。 変にリアルなところのある夢だった。 夢を思い返して不安になっていると、キィ、と小さくノブの回る音がした。 「ゆり、そろそろ起きろ――って、起きてたのか。どうした?」 びくりと身体が震えてしまい、彼に不思議そうな目で見られる。 「な、なんでもない! ちょっと変な夢、見ちゃっただけ」 少し声が裏返ってしまったが、そこも含めて彼には面白かったらしい。 「変な夢? 子供かよ。どんな夢?」 くしゃりと顔を歪めて、彼も子供みたいに笑う。つられて私も笑ってしまう。さっきまでの不安な気持ちが嘘みたいにほぐれていくから、彼の隣は居心地がいい――猫さえいなければ。 「なんかね、私が起きたら猫になってて。ハルカ、猫嫌いじゃん? 猫見たらすーごい怖い顔するし。だから私、捨てられる前に家出したほうがいいかな、って悩んでるって夢。変でしょ」 言うと、ハルカはちょっと変な顔をした。 「あー……猫、猫な」 頬を掻きながら、彼はそっぽを向く。ほんの少し、赤面してるような気がする。どしたの、と、今度は私から聞いてみる。 彼はどこか気まずそうにしながら私のいるベッドに腰掛ける。 「俺、猫、嫌いじゃないんだよな。むしろ、好きなんだけど。アレルギーあってさ、そんで、構いたいけど構えない――みたいな」 どうやら、あの“怖い顔”は我慢している時の顔だったらしい。 「……ふ、ふふっ。なんだ、そうだったんだ。あんな怖い顔してたのに」 思ってもいなかった真実に、笑みが零れた。長い付き合いになるが、我慢している時にあんな顔をするというのは知らなかった。 生き物は好きだというのは、彼の実家で買われているワンちゃんたちへの接し方で知ってはいたけれど――猫だけは例外だと思い込んでいた。 「なら、私がもしも猫になっちゃっても、捨てない?」 「触れねーし近くに行けないけど絶対捨てない……」 てか、どんなもしもだよ。そう言った言葉が照れ隠しなことを、私は良く知っている。
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