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「おお、来たか」
1人の隊員が部屋に入って来た。
そのあと、もう1人の隊員も入って来た。
「よし、部屋を完全に施錠しろ。さあ、これで大声で話しても構わないぞ、タケシ隊員、コウタロウ隊員」
「隊長がこの部屋に来るようにと命じられて来てみたんだけど」
「自分は副隊長からだ。放送を使うわけにはいかなかったらしいな」
タケシ隊員とコウタロウ隊員がそれぞれ言った。
「君達を呼んだのは実はな・・・」
ゲン副隊長がゆっくりと話すのに対し、タケシ隊員は落ち着いて答えた。
「おおよそ見当は付いています」
そしてタチバナ隊長ははっきりと言った。
「君達が夕焼けヒーロー・リヒトの変身前の人間であるという事だ」
それに対しコウタロウ隊員は叫ぶように言う。
「すでにそこまでわかってらっしゃるならこの場でお見せしましょう」
そのあと2人は、何らかの動作を行なった。するとそれぞれ、リヒトの姿になった。普段見せている巨大な姿ではなく等身大の状態ながら。
「おお、やはり」
参謀は感激するような思いでいた。他の人達も同じような思いであった。
2人のリヒトはそのあと、元の隊員達の姿に戻った。
「つまり、この部屋でリヒトは誰が変身するかを調べていたのですね」
コウタロウ隊員の発言に参謀は答え、そして説明を始めた。
「その通りだ。夕焼けヒーロー・ナハトが地球を去ったあと弟のリヒトがやって来る事を知り、我々は新たな地球防衛隊発足とその基地の建設を始めた。その一方で、リヒトは隊員の誰が変身するかを調査するという極秘プロジェクトを、主に我々が行なう事にした。会議の最中ではそれをヘタに知ったらヒーローがまた帰っていってしまうという反対意見もあったが、ごく一部の者だけなら大丈夫だろうという判断を下し、実行に移されたという事だ」
副隊長がそれに続く。
「しかし大変だった。リヒトがやって来たあと、怪獣や宇宙人が出現してリヒトが現われるたびにその時点で存在している隊員達を確認していって、一度も姿を見せない者が変身者であるという前提の元で調べていった。だけど最初は該当者が出なかった」
更に隊長が続ける。
「そのあと、リヒトは2人いるという仮説が出てきて、最初は非現実的だと感じたが、それでもそれに基づいて再度調査した結果、君達が該当者であるという結果が出たということだ。まあ、あの時の出来事があったからこその仮説だったわけだが」
それに対し、タケシ隊員が説明する。
「ああ、あの時は大変でしたよ。自分達2人は怪獣の近くにいて、突然、光線を浴びさせられたんです。あの怪獣はいくらか知性があって、その光線は浴びせた者を自由に操る事ができたんです。それで自分は勝手に変身させられ基地を破壊させられたんです」
コウタロウ隊員が続ける。
「だけど自分は平気でした。仕方がないから自分も変身して一方を止めに入ったんです」
「どういう事だね」
参謀からの質問に対しタケシ隊員が答える。
「つまり、自分は擬態、すなわちリヒトの能力でそのまま地球人の姿になっているということです」
コウタロウ隊員も続く。
「自分は憑依、つまり地球人の体を借りています。兄のナハトと同じです。だから地球人の方が操られてもリヒトの方は何ともなかったわけです」
「なるほど。つまり、リヒトは2人いた。例えば双子の兄弟だったとか」
副隊長の考えにタケシ隊員が反論する。
「いえ、それは違います。元々リヒトは1人でした。地球に来る以前、この前現われた円盤を使う宇宙人の手によって2人にさせられたのです。それによって弱体化させようとしたという事です」
「そうか、あの円盤は怪獣の分身を次々と作っていく代わりに一体ごとに弱くなっていったんだな」
隊長が考え、そしてコウタロウ隊員が補足する。
「その通りです。それで2人にされたリヒトは、むしろこの状態をうまく利用する事を考えました。それぞれ別々の隊員の姿となって誰が変身するかわからないようにしようと。そして変身は必要な時にどちらか一方だけにしていこうと思ったのですけど、さすがに操られた時はそうもいかなくなったわけで」
そのあと沈黙があり、そして隊長が切り出す。
「それでどうするんだね。もしや我々に正体が知られたから地球を去って行くというつもりではないかね」
コウタロウ隊員が答える。
「いや大丈夫です。これくらいの少人数なら地球に残る事もかないます」
これを聞いて、そこにいる全員が安堵した。中には腰を抜かす者もいた。
タケシ隊員が発言する。
「という事で、今後もよろしく」
参謀が叫ぶように言う。
「ようし、他の隊員及び基地内の者達にはこの事は今後も内密の状態で活動していく事にする。以上」
そしてそのあと、コウタロウ隊員が質問する。
「あの円盤はいかがいたしますか」
「そうだな・・・」
係員達が考える。
「それぞれのリヒトに名前は付けなくてもいいですか」
「合体して強化したらリヒトオリジンてのは」
―――続く?―――
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