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会議は進まず
暗闇が覆う窓の外に雪がしんしんと降り積もっていく。小屋の中で鳴り響いているものといえば暖炉の中で薪が燃える音くらいで、辺りはしんと静まり返っていた。小屋の中では10人以上の男達が真ん中にある円卓を囲んで座っており、ある者は人差し指で額を掻き、ある者は真っ赤な帽子ごしに頭を抱え、そしてある者は自慢の白い髭をしきりに触っている。ただひとつだけ共通しているのは、皆がとてつもなく難しい顔をしているということだ。
「それで、どうするのじゃ?」
長い髭を触りながらニコラスが問いかけた。ニコラスは世界中を束ねるサンタ・ユナイテッド極東支部の支部長を務めており、極東アジアに住む子どもたちに数十年に渡ってプレゼントを配り続けてきた。
「時代や流行が変わっても、胸躍る気持ちは変わらない」
これはサンタ・ユナイテッド全体で共有されている信条だ。サンタクロース達は皆子供がわくわくした表情でプレゼントの包みを開く瞬間がこの上なく好きで、そのためだけに今の仕事を続けているといっても過言ではない。しかしながら時代は変わるものだ。今から9年前には極東支部副長でサンタ帽に縫い付けられた北極星がトレードマークのハンスが高層マンションで警備会社のアラームを鳴らしてしまい大騒動になったりもした。近年は各家庭のセキュリティも厳しくなってきており、煙突のない家も多い。ハンスはその中でもいつものように高い身体能力を駆使して子どもの枕元に迫ろうとしたのだが、待っていたのはこの顛末だった。
しかしこれで終わるサンタ・ユナイテッドではない。支部長であるニコラスが自ら警備会社に出向き交渉を行ったのである。その結果、ICチップ入りの身分証を携帯して自らがサンタ・ユナイテッドの一員であるとの証明ができた者については警報装置が作動しないシステムを次の年から構築することに成功したのだ。警備会社の広報担当であり霊長類最強とも言われた格闘技のメダリストとニコラスが契約時にツーショットで撮った写真は今でも小屋の片隅に飾られている。
こうして時代の変化にも対応し続けてきたサンタ・ユナイテッドではあったが、今回ばかりは窮地に追い込まれていた。
「それで、アルティミットロボXZ Onigoroshi verをあと1ヶ月で、あと8000体確保するためにどうすればいいのじゃ?それとも、多くの子どもに諦めてもらうしかないのかの?」
ニコラスは再び問いかけた。
どうしてこのような重苦しい雰囲気になってしまったのか、事の発端は3日前に遡る。
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