ロト777で777777777!

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あれから数日勝利が散財するようなことはなかった。 これに関して言えば福志に本当に感謝していて、もし無駄に使うと全て夢と消えてしまうような気がしたのだ。 もっとも一切使っていないということもなく、使い古していたスマートフォンは最新の機能も充実したものを選んだし、福志にも焼き肉だけではなく腕時計を買ってあげたりもした。 そして、現在は待ち合わせには定番の駅前にいる。 服装も依然と変わりなく、高価なものを買い揃えるようなことはしなかった。 「絵梨花! お待たせ、待った?」 「ううん、今来たところだから」 「そっか。 今日は来てくれてありがとな」 待ち合わせの相手は元カノの絵梨花。 VR世界の出来事は現実ではないため、対面して話すのは別れた時以来でかなり久々だ。 最初は会うことすら渋ったが福志が熱心に話をつけてくれた。 そこでポロっと宝くじのことを喋ってしまい、拳骨一発をお見舞いすることになったのだが。 「いえいえ。 勝利くんは心変わりしたみたいだから私も協力してあげたくて」 ―――まさか絵梨花が協力してくれるとは思ってもみなかった。 ―――駄目元で連絡をしてよかった。 ―――絵梨花と連絡が取れた理由は俺の金が目当てだって? ―――VRの世界ではそうだったかもしれないけどそれはない。 ―――元々金目当てなら最初から俺を選んでいるはずがないからな。 ―――こんな平凡でどこにでもいそうな俺を。 二人は近くの喫茶店へと向かった。 飲み物を頼み早速本題に入る。 「それで、どうやったら内定をもらえるのかアドバイスを聞いてもいいか?」 「うん」 「面接では何に気を付けたらいい?」 「その前にまずは履歴書の書き方からね」 勝利はどうしても就職したくて宝くじに甘えない人生を選んだ。 ただお金があるということは余裕ができ自信に繋がる。 それが外見にも表れているというのが福志や絵梨花の意見だ。 ―――50も会社も落ちているとなると俺に問題があるんだろう。 だから絵梨花に根本的に直してもらおうと思った。 彼女なら自分のことを分かってくれていると思ったからだ。 ―――まぁそもそも、俺が就活に意欲的じゃなかったのが原因なんだろうな。 ―――適当に受けて何か一つでも当たればいいと思っていた。 ―――その心持ちが駄目だったんだ。 ―――でもそれに気付いたところでどこを直せばいいのか分からない。 ―――だから絵梨花を頼ることになったんだけど・・・。 一通り履歴書のアドバイスを受けたところで絵梨花に興味本位で尋ねてみる。 「そう言えば、俺が心変わりしたから協力してあげたいって言っていたよな?」 「うん、さっき?」 「そう。 それはどうしてだ?」 「・・・」 「絵梨花から俺のことを振ったのに、どうして協力してくれるのかなって」 「・・・そのままだよ。 前まで勝利くんは就活を失敗しているせいか、雰囲気も何もかもとても暗く見えたんだ。 それが嫌で私は別れたの」 「・・・あぁ」 ―――やっぱり勉強が理由だったのは俺を気遣っての嘘だったんだな。 「でも今は違う。 勝利くんはちゃんと前を向いて自分の人生を明るくしようとしている。 だから協力したいと思ったんだ」 「・・・そうか」 「本来私が好きだった勝利くんに戻ったからだよ」 ―――別に絵梨花とよりを戻さなくてもいい。 ―――そこまで欲は言わない。 ―――ただこうして今でも関われているだけで満足だ。 「私からも聞いていい?」 「ん?」 「勝利くんがいくらの宝くじが当たったのか知らないけど、高額当選って言っていたから今はもうお金持ちなんでしょ?」 「・・・まぁ」 「なのにどうして就活するの? 就活しなくても生きていけるんじゃない?」 その質問は勝利を試す最後の質問だと思った。 ―――前までの俺なら就活はしなかっただろうな。 だけど変わった勝利は違った。 ―――宝くじで当たった賞金はほぼ全てを定期預金に回し使えないようにした。 ―――このことは既に絵梨花には話してあって大金が手元にないことも知っている。 ―――大金を前にしていると無駄遣いしてしまいそうになるからな。 ―――もちろん何かあれば使えばいい。 ―――だけどその何かはできれば自分で生み出したお金で使いたいんだ。 ―――だから今の俺にとって大金なんてものはいらない。 ―――それにこの気持ちが俺になければ、今こうして絵梨花と連絡を取って再会することがなかったんだ。 「そうだな。 幸せを自ら掴み取る楽しさを味わったからだよ」 そう言いながら目の前にいる絵梨花に笑いかけてみせるのだ。                                -END-
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