2章 変態AIの出身地

3/11
前へ
/35ページ
次へ
「中国政府なら、やりそうなこった。いや、日本政府も中国と同じだ。代弁機を禁止するかもな? いや日本だけじゃない。世界中の政府が使用を認めないだろ」  部長ががっくりした声を落としてきた。 「それなら、家庭用に販売しては?」 「それは余計にまずいだろ。日本中の家庭で包丁が飛び交うぞ。臨時ニュースをお知らせします。お笑い芸人のWさんが、代弁機でまたも隠していた浮気がばれて美人女優の奥さんが逆上して、Wさんの後頭部に包丁を突き刺さしました。そんなニュースが流れるぞ」 「包丁は頭蓋骨には刺さらないと思いますが、刺すならお腹でしょ」 「あのな。それじゃあ、つまらんだろ。包丁が刺さった頭。想像すると面白いじゃないか」  その惨劇の状況を想像しているのか? 部長がにやりと笑ってきた。 「はあ?」  研究員は呆れ顔で部長の顔を見た。 「これが一般家庭に普及したら、家庭は修羅場になる。夫殺し、妻殺しが増えるだろう」  今度は真面目そうな顔をして答えてきた。 「それじゃ、本音代弁機の製造は中止にするのですか?」 「そんなことしたら、この研究所は破産だ。いまは以前に開発した第1号機の売り上げでどうにか持ちこたえているが、この2号機が売れなければ、夜逃げすることになる。どこか、売れそうな国や組織を探すしかない」  今度は夜逃げしそうな顔で言ってきた。 「公的機関や企業、一般家庭にも売れない。だったら売れるところないじゃないですか」 「いや、あったぞ。反政府組織だ。これがあれば、武器を使うより、政権打倒に使える」  部長が少し思案する顔をした後、希望の光を見つけたという眼をして喋ってきた。 「ISとか?」 「いや、そんな悪魔の組織には絶対に売らない」 「売る相手は、独裁政権を倒そうとしている反政府組織だよ。それと、中国に密かに逆輸出するのも面白い」  部長の眼が輝いていた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加