1章 ついに誕生

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「おまえが、やっただろう」  取調官が尋問してきた。 「いえ、やっていませんよ、証拠もないですよね。俺は無実です」  犯人がお決まりのセリフを言ってきた。 「ああ、俺の好みの女だったから強姦した。やった後、女を口封じに殺した」  代弁機が本音を喋った。 「被告人はすごく後悔しています。裁判長、どうか情状酌量を」  弁護士がいつもの発言。 「はい。私はやったことを後悔しています」  被告が反省しているというそぶりをした。 「この強姦野郎、さすがにやったことを後悔しているようだな」  部長が口を挟んできた。 「ヘマをしちまったことを後悔している。今度は捕まらないようにするぜ」  代弁機の声に、また部長の頭から湯気が沸騰しそうになっていた。  日本の性犯罪の再犯率は高い。特に子供を対象とした再犯率は85%と異常な高さだ。性犯罪者たちの反省と後悔の言葉は、罪を犯したことに対するものではなく、警察に捕まってしまったことだった。 「まったくクソ野郎どもだ。二度と強姦ができないよう、こいつらの〇〇〇〇を切断したい思いだ。」  被告の本音を聞いた部長が物騒なことを言ってきた。斧を持って画面の中に乗り込んで、被告を成敗しそうな怒り顔をしていた。 「おい、猫パンチをONにしろ。ここは誰か殴られないとつまらないじゃないか」  また変態AIが声を飛ばしてきた。 「わかった。おまえが殴られるように、代弁機を側に置いてやる」  部長が頭から蒸気を上げたまま言い返した。 「ざんね~ん。殴るのは人間だけだよ」  AIのくせに、口笛を吹きそうな声を返してきた。 「まったく口の悪いAIだ。おまえ、あいつをどこから盗んできたんだ?」  部長はPCに眼をやり、呆れ顔で訊いた。 「ま、この噓発見・本音代弁機が世に出れば、政治屋たちの公約破り、嘘つき政治もできなくなるし、証拠が無いと推定無罪とか、犯罪者を放免するアホな判決もなくなる。なにより無実で投獄されて、人生を狂わされる冤罪も無くなる」  部長はAIを無視して、熱く語ってきた。  部長は破天荒だが、本来の顔は、誰よりも人一倍、正義感の強い男なのだ。裏の顔は、一部垣間見たが、長くなるので説明を省く。
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