2章 変態AIの出身地

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「ところで。いままで訊かなかったが、あのAIは、おまえが開発したんじゃないだろ? どこから盗んできた? 大学の研究所か?」  部長がまた訊いてきた。 「盗んでなんかいません」 「盗んではいない? やはり、おまえが開発したんじゃ、ないんだな」 「実は、開発したのは中国人です。僕が中国に留学していたときに、ある大学の教授と知り合いになりました。名前は、珍宝(ちんほう)といいます」 「ちん〇?」 「いや、ちん〇ではなくて、珍宝です」 「んん、ちん〇か。中国には珍しい名前があるな。珍〇は男の宝だ。いい名前だ」 「いやだから、ちん〇ではなくて、ちん〇〇、いや名前はおいていて、珍教授はあのAIをつくり、噓発見・本音代弁機をAIに作らせました」 「やはり、ちんは宝。だが俺の場合は、宝の持ち腐れだ。ずいぶん長いこと使っていない」  何かを妄想するかのように独り言を喋ってきた。 「珍教授は、この本音代弁機を使って、中国政府の権力者たちの悪だくみを、嘘を暴いて、それを国民に知らせようとしたのです」  研究員は部長の声を無視して、説明を続けた。 「ちん〇、いや、その中国人、なかなか気骨のある良い奴だな。この俺と気が合いそうだ。それで教授はどうなった?」  妄想から元に戻った部長が訊いてきた。 「教授は政府転覆罪で逮捕されました。その捕まる前に、このAIと噓発見・本音代弁機を僕に託したのです」  研究員は曇った顔で答えた。  ちん〇、いや珍教授の運命はいかに。
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