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Side S.
「おはよう、瀬尾」
俺にそう声をかけてきたのは、同僚の相沢渚生だ。
同じ部署では無いが、入社時からの顔見知りで会社内で会えば挨拶を交わす仲までいった。
「おはよう、相沢」
俺は笑顔で挨拶を返す。
──────いつも通り。
であれば俺は若干の興奮を抑えることが出来たのではあろうが、否、今現在彼の姿を見て我慢が出来そうにない状況下にある。
というのも、今俺たちが居るのは会社内ではなく、その手前のごく普通の横断歩道前であるからだ。
しかもこんなにも寒い中、彼はコート一枚を羽織っているだけで、鼻が赤くなっている。
(可愛い)
食い気味で心の中の俺がそう呟く。
そしてその彼はまた、両手で握り拳を作りながらこう言ってきた。
「……今日、寒いな」
「あぁ、そうだな」
(…ぐっ、可愛いかよ!!!!!)
何とか済ました顔で答えれたようで、相沢は俺の事を気にも止めず、じっと信号が青に変わるのを待っている。
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