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(可愛いな、てか首寒そう。俺、マフラーしてるし貸してあげようかな。あぁ、でも加齢臭とか言われたら俺立ち直れない……) 心の中で葛藤する間に、無情にも信号は青に変わってしまった。 「……あ、俺、今日急いでっから。じゃあな瀬尾!」 下手な苦笑いを浮かべながら相沢は、脱兎の如く俺の元から離れて行ってしまった。 走り方可愛いな、などと呑気なことを思っているが、実際問題、俺は今非常に焦っている。 と言うよりも、ここ何年も焦り続けているのだ。 (また逃げられた) 相沢はいつも俺といるとすぐに逃げてしまう。まるで猫のようだ。 向こうから寄ってくることは無いが、たまに差し入れを持っていった時は笑顔でありがとうと言ってくれる。 当たり前のことだと思われるのだろうが、俺にとってはその時の相沢が可愛くて可愛くてしょうがない。 …まあ、それが見たいがために敢えて差し入れを彼に渡しに行っているというのもあるのだが。
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