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傷の手当てを終え、契約を交わすと、カスミは怒った様子で事務所を出ていった。レオは途中まで送ると言ってカスミのあとを追った。。
「ねえ、あいつ、マジでムカつくんだけど! ひとが傷ついてんのに助けないなんてありえない!」
歩きながら、カスミはレオに不満を爆発させた。レオはカスミに同情的だったので、不満をぶつけても構わないと思っているのだろう。フォローは入れておいた方がいいと思い、追いかけてきて正解だった。
「レオさん、友達選んだ方がいいよ」
「いちおう雇い主なんだけど」
「あんな奴の下で働いているの? よく一緒にいられるね。絶対ブラックじゃん。パワハラとか酷そう」
「あー、まあな」
レオは困ったように頭を掻いた。当たらずとも遠からず。思い当たる点が多々あった。
「無茶ぶりは結構あるな」
「やめた方がいいって、絶対! ていうか、あいつの本業、占い師なんだよね? 当たるの?」
「当たるっつーか、星の動きを読んで、今日はこういう日だから、こうした方がいいってアドバイスする感じかな」
「それって占いなの?」
正直なところ、レオにもよくわからない。占っている姿を見たこともない。
「どうだろうな。本人が占いだって言うなら、そうなんじゃないか?」
「めっちゃ胡散臭い」
「否定はできねえ」
カスミは声を立てて笑った。
「レオさん、正直だね。嫌いじゃないかも」
「そりゃ、どうも」
「あ、ていうか、レオさんて本名じゃないよね? 本当は何ていうの?」
話題がころりと変わる。忙しない子だなと思った。
「それはヒミツなんだ。仕事に支障が出るからな」
レオというのはスピカに名付けられたビジネスネームだ。本名は別にある。
「ふーん、そういうもんなんだ」
聞いてきた割に、あまり興味はなさそうだ。しつこく聞かれるのも面倒なので、都合よかった。
「ねえ、レオさんだけで解決できない? あいつ、ひとりじゃ何もできないみたいなこと言ってたけど」
「そりゃ俺も同じだ。つーか、俺がいなくても、あいつひとりで解決できちまうケースもあるんだよ」
「え、じゃああいつ、あたしにウソ吐いたの?」
カスミは目を丸くし、ついで怒りを露わにした。レオは慌てて付け加えた。
「でも、俺がいる方が確実だし、効率がいいらしい」
話を聞くかぎり、今回の依頼内容であればスピカだけでも充分対応できるだろう。ただ、本人の性格に難があるため、レオがいた方がよりスムーズに進むのだ。
「よくわからないけど、依頼を受けてくれたんだから、何とかしてくれるんでしょ?」
「そりゃ当然だろ」
「なら、いいや。明日はお願いね!」
駅に着いた。別れ際、カスミはレオに手を振った。先ほどまでの怯えや怒りは消え失せたのか、にこにこと笑っている。すっかり解決した気になっているようだ。「おう、任せろ」とレオも手を振り返した。
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