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「元々、目までかかる前髪って校則的に風紀の注意対象になるんだよね。龍成だから見逃してたけど…僕はそんなあからさまに顔隠さなくていいと思うんだよなぁ」
……あ、風紀委員としての注意?
なるほど、それは注意されたことなかったけど校則にそう書いてあったような気がしなくもない。というか守ってないやつほとんどだろ。髪染めてるやつの方が問題だし。ウチの学園の校則なんて、あってないようなもんだ。
「えー……っと、マジで言ってる?」
「マジ以外の何物でもないけど?」
「おっ、俺だけじゃ嫌だからさ、そう言うなら七宮も!っそう、七宮も髪黒く染めてきてよ!!」
「……」
こう言えば諦めてくれると思ったんだ。
七宮、髪に命懸けてるって言ってたし。
流石にそれを天秤にかけられたら、俺の髪も許してくれるはず。
「んー、いいよ?その代わりちゃんと髪切ってきてね?」
「やっぱりそうだよな〜。ごめんごめん、でも俺の髪は見逃し…………え?」
「龍成のためならこんな髪くらい喜んで差し出してあげるよ」
………………思ってたんと違う。
七宮さん?アンタしょっちゅう髪いじってんじゃん。やっぱ男は髪の毛だろ的な謎理論俺に散々言ってきてたじゃん。
「な、な、っはぁ?」
「僕がちゃんと髪の毛黒くしてくるんだから、龍成もちゃーんと切ってくること。確認するためにも明日は一緒に学校行こっか」
「…えぇ……」
やばいこれ、絶対切らないといけないやつじゃん。
せっかく口元には自信あるから隠してバランス取ってんのに、目元見せたら余計友達いなくなる。いや、七宮以外この学園にはいないけど。
……あ、友達いないならいいか。
この状況が悪化するかもしれない可能性を除けば、別に良くも悪くも無い提案だとようやく気づく。でもなんかさ、ずっと隠してたから顔もプライベートゾーンになってるというか……見せるの恥ずかしいです。はは。
だからせめて。うん、せめて。
「イケメンがしてそうな髪型にしてください!!」
初めて行った美容院のお姉さんに凝視されたけど、髪だけでもラーメンつけ麺僕イケメンを味わうことにした。
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