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眼には眼を、歯には歯を
【決めた!矢橋のことやっつけちゃお!】
……何度目か分からないため息をつく。
翌日の早朝に七宮から送られてきたメッセージ。
決めたって何をだよ。
矢橋智耶。
俺の事を陥れた張本人。そりゃ、痛い目見てくんねえかなとか多少思ったりはするけど……あのセコム沢山の奴をどうやって?超冷静にまずそう思ってしまう。やめとけよ、とか、そういう言葉が出てくる訳でもなくて─そもそも仕事をちゃんとこなして欲しいのは本当だ─シンプルに無理だとメッセージを見ながら再びため息、のエンドレスなう。学校の廊下を歩きながら返信を考える。
どうやって、と返信しようとした時、後ろからドタドタという足音がして思わずふりかえった。
「……あ?」
俺の姿を捉えるやいなや、少し驚いた顔をして急ブレーキをかけた相手。
───春野ナオト。まあ例の転入生。
つまりココ最近の俺のストレス源ってわけだ。てか転入生登校時間早くね?まだ開校して数分だべ?
「あっぶねぇ!びっくりしただろっ!……って、アレ?お前見た事ねー奴だな!なんて名前だ?!」
「……、春野くん、廊下は走っちゃダメだよ?えーっと、俺は小牧龍成。親衛隊だけど君を取って食ったりはしないから……まあ打ち解けられても困るけど…警戒しなくていいよ」
「俺の名前知ってんのか!ナオでいいぞ!龍成か〜!親衛隊って、隊長がすんごいヤベー奴なんだろ?俺の事チョー嫌いで、狙ってるから気をつけろって智史が言ってた!」
……おっと?
「あー、いやぁね。悪いけど、隊長は俺。君が言ってるような事実はないし、その証拠に俺が春野くんを呼び出したりしたこと、今までないよね」
「えっ、そうなのか!んー、うーん……。龍成は良い奴そうだからな、オマエが言ったことを信じてやる!」
「はは、ありがと」
ちょろい。
ちょろすぎないか転入生???
これ、絶対俺とかじゃなくて矢橋が言っても同じように信じてたでしょ……。
とりあえずお礼も兼ねて笑顔で(見えていないだろうが)ありがとうと告げると、春野は一瞬体を硬直させてそのまま動かなくなった。え?
……あ。
礼を言う際に首を傾けたのだが、その拍子で目までかかっていた前髪が片目を露わにするように流れてしまっていることに気がついて、慌てて髪を乱暴に戻す。
「見苦しいもの見せてごめん。そろそろ皆も登校してくる頃だろうし、俺行くね」
「──あっ、ちょっと待てよ!」
固まっていた春野がハッとしたようにまた動きだしたかと思えば、腕を掴まれて行く手を阻まれてしまった。
「何?」
「……龍成はなんでそんな髪してんだ?オマエ、すげーかっこいいのに」
「え、あ。まあとりあえずそれは世辞だと捉えとくね。髪の毛のことは春野くんにだけは言われたくないなぁ」
「あ!ナオでいいって言ってんだろ!」
「はいはい春野くん」
「おいっ!!」
七宮と話してる時以外でこんなに楽しいの久しぶりかも、なんて他人事のように思いながら考えた。
春野くん、意外といい子じゃん。それに、
【七宮、矢橋討伐の件だけど。
例の転入生使えるかも。】
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