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ゴーンゴーン。
西端に高く聳える鐘楼の堂から低く木霊する
十八時を示す音。
其れは即ち、宴会の始まりの鐘。
「ゲ。不味い遅刻だ」
「もぉ〜!ヨイヨイ時間確認しといてって言ったじゃん!」
「主役は遅れて登場するモンだろ。あ、風紀は乾杯の挨拶するんだったか?」
ニヤニヤと気に食わない顔で特大の爆弾を落としてくれた。幾ら優遇の効く役職とはいえ、盛大なパーティに遅刻など非常識にもほどがある。
サァーと顔が青褪めた。
と、同時に日頃忌み嫌いあっているこの男が態々足を運んで来た本当の理由を理解する。思わず取り繕うのも忘れて顔を歪ませた。ギリ、と爪を噛んで睨みつける。本命はコレか。
「おいおい、キレイな顔が台無しだぜ?いつも見たいに笑って見せろよ、見下しきった嗤いでさァ」
ぐい、と勢いよくネクタイを引かれる。ティーカップが音を立てて床に崩れた。強く締められたタイと鼻先で嗤う男の目が、琥珀の瞳を彷彿させる。
手が、震えた。
締まる喉がヒューヒューと音を立てる。
「ゲホッ!ごほ、ゴホ…!」
手が離されて重力に従いソファに倒れ込んだ。オレンジの照明がふと和らぐ。ブレる視界の奥で二つの影が音もなく左右を固めた。
「んー、幾ら牡丹がクズだからってこれ以上は見過ごせないなぁ」
「こんなんでも俺らの大事なツレなんだよ」
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