第一章 帝・皇寄宿学院

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※ 桜の花が舞い散る並木道。 石段造りの階段を降りた渓谷に、学院はある。 幾度となく改装を繰り返した結果、家屋が折り重なった巨大な城。太鼓橋で繋がれた洋館が滝を挟んで囲っている。きっと、谷を覗き込んだ人間はあまりの美しさに息を呑むだろう。なんて簡単な憶測が立つ、浮世離れした、幻想的な空間。 それこそが、帝・皇寄宿学院[テイ・スメラギキシュクガクイン]。我が国をより発展させる為に開校された、完全全寮制の育成学校である。 日本全国から集められた最高峰の人材。 家柄、能力、容姿、どれを取っても一流の男児を閉鎖的な空間に押し込んで、独自の文化を作らせる。 この学院は国の縮図だ。謂わば、年若い生徒が社会に出た時の為の予習。よって、間違いなど大いに結構!外で失敗するよりもずっとマシだ。 そんな教育方針だから、この学院の中で重大なミスをしても問題ないのである。例えば、作ってしまった独自の文化が、同性愛だったとしても。 「キャァァアア!!!!」 「お麗しいですッッ!!生徒会長さまぁ!!!」 「副会長様此方をお向きになってぇぇぇ!!!!」 「抱いてくださいまし!!会計殿!」 「双子書紀くん抱かせてくれえええ!!!!」 金とワインレッドを基調とした煌びやかな講堂に、不似合いな叫び声が響く。二階の中央、特等席から下品な豚たちを静かに見下して鼻を鳴らした。全く、見苦しい。同じ人間とは思いたく無いな。 ベルベットの椅子に身を沈めて寝る体制に入る。両脇を見れば欠伸を零す男と既に夢の中へ旅立った男。考えることは同じらしい。 「静粛に」 耳障りな鳴き声が鳴りを顰め、スピーカーを通した声が耳に届いた。先程の騒音と比べれば幾分かマシなものの、此方も此方で、また、なんとも癪に触る。
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