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一週間の記憶
「私、実は…」
「記憶が一週間ごとに消えてしまうんです」
「えっ…!?」
予想外すぎる答えで、俺は一瞬信じられなかった。
しかしそれなら昨日の事を忘れているのも理解できる。
「信じて貰えないかもしれないですけど、本当なんです」
白池はそう言うと、少し悲しそうな顔で自分の秘密を話した。
「昔からずっとそうで、何度か病院にも行ったんですけど原因は分からなくて」
「それってかなり不便じゃないか?」
一週間ごとに記憶が消えるなんて生活に支障が出るのではないかと俺は思わず聞いてしまった。
「はい。だから自分のことや周りの人のことはメモ帳にちゃんとメモするようにしてるんです」
「なるほど…だから今日俺が原因声をかけた時にメモ帳をを見たのか」
メモ帳を見せてもらうと、白池のこと、それから白池の家族や友達、俺のことなどが細かくメモしてあった。
それぞれのページにその人の写真が貼られていて、写真が無いページには似顔絵が描かれていた。
「写真がない人は似顔絵を描いているのか…すごいな」
「ありがとうございます、あっでも…」
「今言ったこと、信じていなくても大丈夫ですよ。急にこんなこと言われても困りますよね…」
白池はそういったが、俺は白池が言ったことは本当なのだと確信していた。
「いや、信じるよ。大体白池が嘘をつく理由なんてないだろ?」
「…!」
「じゃあ俺の秘密も言うよ。俺は、約1000年前からの前世の記憶が残っているんだ」
「信じられないかもしれないけど本当だ。だから、一週間ごとに記憶が消える人がいたって不思議には思わない」
白池は驚いた顔をしたが、俺のことを疑っているようには見えなかった。
「…はい!ありがとうございます!」
しばらく沈黙が続いた後、白池は笑顔でそう言った。
「じゃあ、そろそろ帰るか。」
「そうですね」
白池はそう言うと、メモ帳の俺のページに「前世の記憶が残っている」と書き足した。
「しかし先輩に前世の記憶があるなんて驚きました。」
「いや俺も白池が一週間ごとに記憶が消えるなんて予想もしてなかったから驚いたよ」
帰り道、俺たちはお互いの秘密を知ったことについて話していた。
「でも、先輩が信じてくれて良かったです。せっかく仲良くなれたのにこれで離れてしまうのは嫌だったので」
「いや、自分が前世の記憶があるって時点で信じられないのはおかしいだろ」
「あはは、それもそうですね!」
「明日は学校か〜、あっ、白池の友達って白池の記憶について知ってるのか?」
「昔からの友達なら知ってる人もいますけど、最近の友達はほとんど知らないと思います」
「なるほど…」
そんな会話をしていると、いつの間にか家に着いていた。
「先輩、今日はありがとうございました!」
「こちらこそ、じゃあまた明日な」
笑顔で手を振る白池を見て、俺は何故か少し懐かしいような気分になった。
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