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DAY0 プロローグ
___もうこの世界にはうんざりだ。
そう思いながら、私はため息をつく。
50XX年、地球は深刻な環境汚染により破滅への一途を辿っていた。
結局、20世紀ごろに考えられていた火星移住計画は実現することなく、人々はただ、すぐそこに迫っている終着点を見つめながら、希望のかけらも見出せない日々を送っているばかりだった。
相変わらず汚染された空気がまずく、息をしたくない。生まれた時から、ずっと空気はガスで濁った、ドブ川のような匂いがする。
だから深呼吸をしたら肺が汚染されて死ぬ、そのことを忘れずに、私達は短く浅い呼吸をくりかえす。
かなり息が辛いけれど、一瞬たりとも気を抜くことなんてできない。
いっそ呼吸を手放したいとは思うし、実際にそうしたいけど__
やっぱりまだまだ生きたい。
ここまでくると意地だ、
だから仕方なく息をする。ああ、不快で不快で仕方がない…
◇◇
「今日もあっつ〜……」今日は4月1日。なのに気温は40℃を超えていた!
こんな地でも、美しい自然を誇れる時があったなんて……信じられないと私はたびたび思う。
マチュピチュ、ピサの斜塔、富士山、自由の女神、青の洞窟、ウユニ塩湖、タージマハル、ナイアガラの滝、ピラミッド…
遠い昔に存在していた絶景スポットに思いを馳せてみるけれど、なんの薬にもならないし、虚しくなるだけ。
これらの場所の写真やデータは、もうランサムウェアなどの影響で開けなくなっていたり、色褪せてしまっていてよく分かっていない。勿論現地も開発によって消え失せた。
今は全て発電所になっている。
私はこんなに愚かで罪深い人間のことが大嫌い。
…だけど。
もうすぐ重大な環境汚染の為に塵となってしまう人類の最期の楽しみに、
『仮想空間』
を創ってくれた事には、少し感謝している。
そして、実際私達はこの仮想空間を楽しんでいた。
仮想空間に居れば、特殊な意識・生命レベル操作のおかげで暑さ、空腹からも解放されるし、美しい景色だって見れる。しかも、人々のストレスレベルも低い上犯罪行為は出禁となるのですごく平和だ。
だから私は。
この平和な仮想空間で、あんな恐ろしい大量殺人…デスゲームが起こるなんて、
思ってもみなかった。
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