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成人式
「母さん、見てみて!」
娘が振り袖姿を私に見せてくる。
「どう?似合ってる?」
「ええ、とっても似合ってるわよ。
昔の私みたい」
「えー、どうかなー?」
私は娘の写真を撮りながらそんな会話をする。
「……あ、友達が呼んでる。
じゃあ母さん、またあとで」
そう言って、娘は友人のもとに走っていく。
本当ならば、私は娘の晴れ姿を見る前に死んでいた。
そう思うと、どうしようもなく嬉しさが込み上げてくる。
だが。
私は、未だに契約の代償が何なのかが分からない。
分からないまま、私は延びた余生を楽しんでいる。
ただ漠然と。
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