六話目

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六話目

 足音が聞こえて来るほうを見ると、廊下を走る素彦と目が合った。  合った途端に、すっげー嬉しそうに笑うから、理科準備室の鍵を落としそうになる。  素彦には気づかれていないと思うけど。 「きゃなめ」と言った後に、ちょっと気まずそうな顔をするのが、さっきから面白い。  本当はどうでもいいんだ。ただ、たまに素彦の真似をするやつがいるから、それが鬱陶しいだけ。  ちゃんとテスト勉強はしてるのか、学校には部活しに来ているとしか思えない時もある。  三組の早坂さんの名前もびっくりした。  夏休み前に告白されて断った相手だ。  いつも一緒にいる子だと、あの子かな髪の長い……名前は覚えてないが、断った後、何度か廊下で睨まれた気がする……怖い怖い。  気が強そうだから、素彦が見た目と違って、真面目で気にしいなのがバレたら、相手のほうが勝手に透明人間扱いしてくれそうだけど。  ま、黙っておこう、また色々詮索されそうだし、由延の為にも。  かまって欲しそうに、また素彦がこっちを見ている。  はいはい、今度は何?
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