ヒメジョオンには遠いけど

3/12
前へ
/12ページ
次へ
「靖子さん、なにか考え事?」  私の箸は止まってしまっていた。 「ううんなんでもないよ」  雅くんのコップにお茶注ぎ足す。 「味噌汁うんまい」  雅くんの皿を見ると、朝食はほとんど残ってなかった。 「残さず食べてくれて、ありがとう」 「靖子さんの味好きだから。もしかして胃袋掴まれてる?」 「そういう作戦かもね。私の料理なしではもう生きられないのだ」  大きく口を開け笑う。雅くんもくすくす笑ってる。楽しいのに、心には満たされない領域があった。  いつも通り、食べた皿を雅くんが台所に下げた。 「ありがとう」 「こちらこそ、ご飯作ってくれてありがとうよ」  優しい人。  シンクに水を貯めた。食器の汚れと一緒にもやもやした淀みを流したかった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加