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「靖子さん、なにか考え事?」
私の箸は止まってしまっていた。
「ううんなんでもないよ」
雅くんのコップにお茶注ぎ足す。
「味噌汁うんまい」
雅くんの皿を見ると、朝食はほとんど残ってなかった。
「残さず食べてくれて、ありがとう」
「靖子さんの味好きだから。もしかして胃袋掴まれてる?」
「そういう作戦かもね。私の料理なしではもう生きられないのだ」
大きく口を開け笑う。雅くんもくすくす笑ってる。楽しいのに、心には満たされない領域があった。
いつも通り、食べた皿を雅くんが台所に下げた。
「ありがとう」
「こちらこそ、ご飯作ってくれてありがとうよ」
優しい人。
シンクに水を貯めた。食器の汚れと一緒にもやもやした淀みを流したかった。
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