犬と魂

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 ご飯が楽しみになり足取り軽く家に向かう。  公園の横を通り過ぎようとしたとき、どこからともなくテレビの砂嵐のようなノイズ音が聞こえてきた。  空耳だろうと思いたかったが音ははっきり聞こえ、辺りを見回すとブランコがひとりでに動いていた。  そしてそのブランコには砂嵐の画面を人型に切り取ったような物体が座っていた。  魅せられるようにそれに近づき、ブランコの周りを囲んでいる柵をこえた瞬間、あたりが真っ暗になった。  人型の物体がブランコから降りこちらを向いた。どちらが正面かわからないが、黒く丸い点が三つ認識できたので、僕に向いてるのが正面だろう。 「よぉ、美味しそうな匂いがするな、お前」  人型の物体は近寄ってきたかと思うと持っていた袋を奪い中身を見る。 「これか。いい匂いがするのは」  砂嵐のようなノイズが混じった声でそう言い、袋から出され包装紙をビリビリと破り箱を開けた。  肉を顔と思われる部分に近づけると、次の瞬間三つあるうちの下の黒い点が大きくなり肉を飲み込む。 「うん。これは美味い!」  そう言い五百グラムほどあった高級和牛肉は、次々と黒い点の中に消えていった。  楽しみにしていたものが消えたことと、目の前の不可思議な物体で頭の中が渋滞を起こしている。 「こんな美味いものをくれたお前にはお礼をしてやろう」  ーーあげてなどいない。勝手に奪って食べただけだ。  文句を言おうとしたがお礼に願いを叶えてやろう、と言ったので出かかった言葉を飲み込みそれは本当かという言葉に変わった。 「あぁ、本当だ」  いやいやいや、こんな非現実的なやつの言うことを信じれるか?第一これは夢などではないのか?  そう考えていると、ないなら勝手に決めるぞと低い音で言われたのでパっと思いついたことを言う。  それは次のテストで一位をとれるくらい頭がよくなりたいだ。  そう言うと物体はブランコに乗るよう促した。 「目を閉じ、ブランコを思い切りこいで飛べ」  素直に従うのもおかしいが、すでにおかしな状況なので言葉に従い言われた通りにする。  目を閉じ風を切るようにブランコをこぐ。そして飛んだ。
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