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ブランコから飛び勢いで目を開けたが、そこはさきまでいた公園と何ら変わりはなかった。
自分の体にも変化はない。
ーーなんだ。何も変わってないじゃないか。
残念に思いながら手を見るとやはり女性からもらった肉は消えていた。
周りを見ると砂嵐のような模様の人型の物体はいない。
どこからどこまでが現実で幻だったのか、きっと疲れていたのだろう、そう思い帰宅する。
謎の現象があってから六日ほど経ったある日の夕方。あれから頭が良くなった気はせず自室で宿題と向き合っている時。
急激に強い眠気に襲われた。机に肘を置くと眠気に負け、額を机にぶつけそのまま眠りに落ちてしまった。
暗闇の中、小さな光が僕に向かってくるのと同時に、僕の体から小さな光が出てどこかへ向かってゆく。
体から出た光と共に僕の意識は薄れていった。
ハッと目が覚めるとそこは知らないどこかのリビングだった。視線の位置が低く感じる。
目の前は銀の柵でおおわれている。まるで閉じ込められているみたいだ。
体に違和感を感じた。まるで毛におおわれているような、なぜ手を床につけているのか。
夢なのかと独り言を言うように声を出すと、その言葉はそのままではなくワンという犬の鳴き声になった。
自分ではちゃんと喋っているつもりだ。だがワンと変換される。
「どうしたのポルシェ、そんなに吠えて」
そう言いながらリビングの角から顔を出したのは見覚えのある中年女性だった。
ポルシェ……、確かにそんな名前の犬だった。女性はこちらを見てポルシェと呼ぶし体の違和感、言葉。
ーー僕はあの中型の犬にでもなってしまったのだろうか。
女性は赤いリードを持ってきて首のあたりを触り首輪にリードをつなぐ。
おそらく散歩だろうがそんな気分ではない。
テレビなんかでよく見る、病院を嫌がる犬に首輪が食い込んでいる場面があるが、まさに今その状態である。
「どうしたの?今日は病院の日じゃないのに……」
抵抗しても無駄そうなのでとりあえず女性に連れられ外に出ることに。
一体何が起きてしまったのか。夢、にしては意識ははっきりしているし、鼻に入ってくるさまざまな匂い、それらがリアルだ。
両手をついて歩くのもなぜか辛さを感じない。こうして四足で歩くのは犬にとって当たり前だからだろうか。
この間通った川沿いの道から建物を挟んで一本横の道を歩く。
何が何だかわからないまま散歩をし結局女性の家まで帰ってきてしまった。
「もうすぐご飯だからねー」
入口入ってダイニングテーブルの奥にあるサークルの中がポルシェの定位置らしい。
女性は首輪からリードを外すと僕をサークルの中に入れる。
主題をしていたら強い眠気に襲われて、寝て起きたら知らない…、一言二言はなしただけの女性の家になぜか犬として……。
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