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ドッグフードが入っているアルミの食器が目の前に置かれる。
「ごはんだよー、ポルシェ」
杜若母が笑顔で差し出してくるがいまいち気が進まない。
お腹は空いている、がドッグフードは人間としての意識があるせいか喜んで食べようとは思えない。
「どうしたの、食べないの?」
食べないのと言われても目の前にあるのはドッグフードだ。
じーっと見つめていると、杜若母が小声で病院に連れて行った方がいいのかなと言う。
「おやつあげすぎただけじゃない?」
テーブルにつき食事をしている椿が言った。
そのテーブルからは食欲をそそるいい匂いがした。どうせ食べるならそっちの方がいい。
僕が食べないでいると心配そうな表情をする母に負け渋々口をつける。
シリアルフレークから砂糖などを抜いたような味がした。意外と食べられなくはない。けど進んで食べようとは思えない。
僕が食べ始めると安心した母はテーブルにつき食事を取る。
二人が食事を終え、食器がなどがすべて片づけられるとサークルの扉が開けられた。
僕がポルシェになっている間自由に動けるのは食後のこの時間。
食事を終えた椿はいつもソファに寝転がり携帯をいじっている。
人間の時は下手に近づけないが、犬の時なら大丈夫と思い近づこうとするがなかなか勇気が出ず。
今日こそは……、二人掛けのソファで椿一人だと少しスペースができる。そのスペースにそっと座った。
姿は犬でも中身が人間、しかも仲良くもない人間だとキモくないかと自問自答する。
一方椿はすっと立ち上がり自分の部屋へと行ってしまった。
「もう椿は、もっとポルシェと仲良くすればいいのに。ねぇ?」
よしよしと母が軽くなでる。
ポルシェにかまっているのはいつも母ばかりだ。椿はポルシェのことが好きじゃないのか。
人間の時にに聞いてみよう。話すきっかけにもなるし。
そしてオリシンスにあげる肉も買っておこう。いつ現れるかは分からないが……。
少しうるさめに設定した携帯の目覚ましの音で目を覚ました。
いつもの自分の部屋だが所々ものが落ちていたりする。最初に魂が入れ替わって戻ったときが一番ちらかっていた。
その時はアンモニア臭もしズボンが濡れていた。
母親にも言動を不審がられたりし、苦し紛れに「友達との罰ゲームで犬になりきるってなったんだ」と言ったが、持つ気がしない。
下手したら精神病院などに入院させられてしまうだろう。
そうなる前になんとかしたい。しかし涙に触るって……。
僕は尿対策としてしたはいたおむつを脱ぎ消臭スプレーを振りまく。
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