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「私がいるのに、こういう風にまじないの類を使って手を出してこられるの、何ていうか不快ですよね」
ただまっすぐに、前を見据えたままロザリア様はそう言う。その後、私に視線を向けながら「……シェリル様も、私のこと舐めない方がいいですよ」と告げてくる。その目は妖しく光っているように見えて、ミステリアスな魅力に、囚われてしまいそうになる。
「夫婦喧嘩をしたからって、ギルバート様のことを呪ったりしない方が、いいですよ」
彼女は、自身の唇に人差し指をあてながら、私にそんな忠告をくれた。……その忠告は、ありがたいような、ありがたくないような。不思議なもの。だって、私はギルバート様と喧嘩をしても、呪ったりすることはないだろうから。……呪いのあれこれ、全く知らないし。
「ご忠告、ありがとうございます。でも、私は呪いやまじないの類を何も知らないので、期待には沿えないと思います」
目を閉じてそう返せば、ロザリア様は「シェリル様って、真面目ですよね~」とけらけらと笑いながら言う。
「今の、ほんの冗談ですよ。そんな真面目に返さなくてもよろしいのに~!」
「そ、そう、ですか?」
「そうですよ。……まぁ、舐めないでほしいっていうのは、本音ですけれどね。じゃあ、行きましょう~!」
ロザリア様はそう言って、歩き出す。なので、私はエリカに「行ってくるわ」と声をかけて、ロザリア様の後に続いた。
(……嫌な予感が、する)
この嫌な予感は、一体何から来ているのか。それは、よくわからない。ただわかるのは――本能が告げているということ。
――狂った愛情が、関係していると。
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