第26話 一人の容疑者

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「年齢は大体二十歳前後。利用した魔道具からするに、身分はいいはずです」  ロザリア様は、淡々とそう告げる。……二十歳前後の、男性。身分はいい。そうなると、貴族の男性が一番に思い浮かんでしまう。 (……エリカに、恋焦がれていた貴族の男性?)  エリカは愛らしい容姿と性格から、貴族の男性にとても人気があった。とはいっても、実家が落ちぶれた侯爵家だったので、なかなか婚約の申し込みはなかったみたいなのだけれど。……エリカも、きちんとした家に生まれていれば、幸せになれたのだろうな。 「……あと、これはただの予想なのですが」  私が考え込んでいれば、ロザリア様はそう前置きをして「……多分、このお方は騎士……の関係者だと思います」と言いにくそうに教えてくれた。 「……そこまで、わかるのか?」 「まぁ、予測でしかないですが。なので、外れている可能性もあります」  胸の前で手を握りながら、ロザリア様がそう言う。……貴族の男性で、騎士の関係者。さらに、二十歳前後。そうなったら……一人、思い当たるお方がいる。 (エヴェラルド・パルミエリ、さ、ま)  パルミエリ伯爵家の、長男。そして、私とエリカの幼馴染。それが、エヴェラルド様だ。
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