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「シェリル様、大丈夫ですか……?」
「えぇ、もう大丈夫よ」
にっこりと笑って、私のことを心配そうに見つめてくるサイラスさんやクレア、それからマリンに返事をする。
今日は、ギルバート様と共に街を視察する日。昨日私が魔力不足で倒れてしまったため、周囲はひどく心配してくる。けれど、私は視察に行きたかった。いずれこのリスター伯爵家の夫人になるのだから、今のうちにやれることはやっておきたい。
「シェリル様。何かありましたらきちんとお薬を呑んでくださいね」
「えぇ、わかっています。行ってきますね」
見送りの使用人たちに背を向けて、私はリスター家の馬車に乗り込んだ。
その後、ギルバート様も馬車に乗り込まれて、馬車はゆっくりと走り出す。
今日向かう街は田舎の方にあり、そこそこ遠いということ。なので、朝食を食べてすぐに出発している。エリカにはきちんとお話しているし、何かがあればマリンもついてくれている。だから、大丈夫……だと、思いたい。
「今日はノールズの方に行く。農業が盛んで、観光地ではないが景色はいいぞ」
「そうなのですね」
ギルバート様のそのお言葉にうなずきながら、私はただ馬車に揺られる。馬車に揺られていれば、ギルバート様と少しだけ肩が触れ合った。たったそれだけなのに、私の心臓は大きく音を鳴らす。なんというか、ドキドキが収まらない。
そんな私の気持ちなど知りもしないのだろう、ギルバート様は要望書に目を通されていた。その横顔もとても素敵で……なんというか、本当に私って恋しているのだなぁって、思ってしまう。
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