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「ところで、シェリル」
「はい」
「身体の方は、大丈夫か?」
……言っちゃあなんだが、ギルバート様のこの問いかけは本日十一度目である。朝食の時から、ずっとずーっと同じことを質問されている。けれど、心配されるのは素直に……嬉しい。使用人たちも、とても私のことを心配してくれるもの。
「大丈夫ですよ。いざとなればお薬もありますし」
「だが……」
「ギルバート様」
あまりにも引いてくださらないギルバート様に対して、私は顔を見上げながら「私とお出かけ、嫌ですか?」と問う。
「私とのお出かけが嫌ならば、言ってください」
我ながらどれだけ女々しい言葉なのだろうか。そう思ったけれど、ギルバート様はその言葉に気を悪くされた様子はなく「俺は、シェリルと出かけたいが……」とおっしゃる。その表情は、何処となく頼りなさげだった。
「では、構いませんよね。それに、いざとなったらギルバート様が助けてくださいます」
まっすぐにその目を見てそう言えば、ギルバート様は「……そうだな」と返事をくださって、口元を緩められた。その表情がとても魅力的で、やっぱり私の胸にきゅんとしたものが走ってくる。……このお方、可愛らしい性格をされているのよね。
「私も、ギルバート様とのお出かけ楽しみでしたから」
少し視線を逸らして、おまけとばかりにそう言えば、ギルバート様は「そ、そうか」と何処となく嬉しそうな声を出される。……やっぱり、可愛らしい。私よりもずっと、可愛らしいお方だ。
(なんて言ったら、怒られちゃうけれど)
心の中でそう付け足して、私は照れたような表情をされるギルバート様に笑みを向けていた。
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