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「……ギルバート様」
そんなギルバート様を見ていると、私の心の中にいろいろな感情が湧き上がってくる。ぎゅっと手のひらを握って、ギルバート様の目を見つめる。そうすれば、ギルバート様は「ど、どうした?」と少しだけ慌てたように言葉を返してくださった。
「私がいなくなったら、悲しんでくださいますか?」
どうして、そんな問いかけをしたのかはよくわからない。
もしかしたら、身体が弱っているから弱音を吐きたかったのかもしれないし、別の理由なのかもしれない。我ながら女々しい質問だとわかっているけれど、言いたかった。
ギルバート様のお顔を上目づかいで見つめそう問えば、彼は「……何を、言っているんだ」とおっしゃる。その声は、露骨に震えていた。
「……たとえ話、ですよ」
違う。私は、本気で自分の身が危ういことを理解していた。私の魔力が土とリンクしている所為で、私の身体はいろいろなものに左右されやすいらしい。もちろん、私以外にも同じような女性もいるはずだけれど、私は詳しくは知らないから。
「たとえ話、か」
私の誤魔化しが通じたのか、通じていないのか。ギルバート様はボソッとそうお言葉を零されると、すぐに「そんな話、するな」と力強くおっしゃった。
「俺がシェリルを助ける……なんて、かっこいいことは言えない。だが、精一杯助けられるように努力はする」
「……ギルバート様」
「なんて、こんなおっさんに言われても嬉しくないだろうな」
ご自身の髪の毛を掻きながら、ギルバート様はそう言葉を締めくくられた。……どうして、このお方は。
「おっさんなんて、おっしゃらないで」
私の好きな人を、そうやって貶されるのだろうか。私の好きな人は、確かに年齢はずっと上だけれど可愛らしい性格をしていて、頼りがいのある人なのだから。
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