第30話 シェリルとギルバートの視察(3)

4/4

4705人が本棚に入れています
本棚に追加
/219ページ
「では、お願いしてもよろしいでしょうか?」  お心のままにということは、この提案に乗ってもいいということだろう。そう判断して、私はターラさんに微笑みかけながらそう返事をする。すると、彼女は「では、案内させていただきますね」と言ってぺこりと一度頭を下げてきた。 「ソフィ、ティナ。おうちの中に戻っていなさい」  そして、彼女は女の子にそう指示をする。だけど、二人は「えー」と言いながら何処となく不満そう。 「私も領主様の婚約者様と一緒に居たい~」 「ティナもいたいわ。だって、お姫様みたいなお方なのだもの」  二人は口々に一緒に居たいと言ってくれる。ターラさんは困っていたけれど、私からすれば別に一緒にいても問題ない。 「あの、ターラさんさえよければソフィちゃんとティナちゃんも一緒にどうぞ」 「……よろしいのですか?」 「はい。子供目線からでも気になることがあるかもしれないので」  肩をすくめながらそう言えば、ターラさんは「……この子たち、お転婆ですが」と言って眉を下げてくる。 「構いません。子供は元気な方が良いですよね」  幼少期のエリカを思い出すから、子供は比較的好きだったりする。……あの頃のエリカは、とても可愛らしかったもの。 「……そう言っていただけて、なによりです。ソフィ、ティナ。シェリル様に迷惑をかけてはダメよ」 「は~い」 「わかっているわ、お母さん」  自分たちの要望が通ったからなのか、二人はニコニコと笑っている。その表情が何処となく可愛らしくて、私はふっと口元を緩めてしまった。
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4705人が本棚に入れています
本棚に追加