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「そうですか。……まぁ、先代の領主様……特にご夫人はかなり個性的なお方ですからね」
ころころと笑ってターラさんはそう言う。その話は、ぜひとも聞いておきたい。そう思ったけれど、はしたないかなと思って尋ねることをためらってしまう。
だけど、ターラさんはそんな私の気持ちを汲み取ってくれたらしく、「領主様のお母様は、個性的と言いますか……強烈なのでございます」と話を始めてくれた。
「……強烈、とは?」
「そうですねぇ。まず性格はきつめです。おかげで今も領主様も頭が上がらないそうで……」
肩をすくめながらターラさんはそういう。その足元にはソフィちゃんとティナちゃんがまとわりついていて。ターラさんは二人を軽くあしらいながら歩いていた。
「ですが、お優しい方なのですよ。私たち民のこともよく気遣ってくださるのです」
「……そうなの、ですか」
「ただ、どうしても領主様にはきつく当たってしまうようで……。最近こちらにいらっしゃったときは、早く孫の顔が見たいとおっしゃっておりました」
そのお言葉を聞いて、何故ギルバート様が私にご両親を紹介してくださらないのかがわかったような気がした。だからこそ私が苦笑を浮かべていれば、ターラさんは「ですが、こんなにも素敵な婚約者様がいらっしゃいますので、その点は問題ないような気もしますけれどねぇ」と言ってくれる。
「さて、長話をしてしまいましたね。こちらが町の商店が立ち並ぶ通りでございます。……商店街という言葉が似合いますでしょうか」
それから、ターラさんは一度咳払いをしたのち顔を上げる。そのため、私もゆっくりと顔を上げた。
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