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そこにはたくさんの商店が並んでおり、とても活気づいている。そのため、私の心がワクワクとしていく。……こういう場所、あまり来たことがないからどうしても、ね。
「どうしますか? 見学していかれますか……?」
ターラさんがそう問いかけてくれたので、私は「ぜひ」と言ってにっこりと笑う。
すると、不意に手を掴まれた。驚いてそちらに視線を向けると、そこにはソフィちゃんがいた。彼女は「お気に入りのお店に連れて行きます!」と言って私の手を引っ張っていく。
「ちょ、ソフィ!」
後ろからターラさんの戸惑ったような声が聞こえたけれど、私は振り返って「大丈夫です」とターラさんに伝える。
(ソフィちゃん目をキラキラとさせているし……あんまり叱るのもよくないわ)
それに、せっかく私のことを案内してくれようとしているのだ。その気持ちは嬉しいし、無下には出来ない。
だけど、さすがに引っ張られるのは辛い。そんな風に思って、私は「ソフィちゃん」と後ろから声をかける。
「私はきちんとついて行くから。だから……そんなに強い力で引っ張らなくても大丈夫よ」
「……はぁい」
どうやらソフィちゃんは物分かりが良いらしく、私のちょっとした注意を快く聞いてくれた。それが嬉しくて私が彼女の髪を撫でれば、彼女は目を細める。……可愛らしい。エリカみたい。
(……エリカ、大丈夫よね)
ふとそう思ってしまったけれど、きっと大丈夫だと思いなおす。お屋敷にはみんないるし、エリカに何かがあることはないだろう。……ロザリア様も、いてくださるし。
「シェリル様?」
私があまりにも神妙な面持ちをしていたためか、ソフィちゃんが怪訝そうに私の顔を覗き込んでくる。だからこそ、私は「何でもないわ。お母さんやティナちゃんを待ってから、行きましょうか」と笑って言葉をかけた。
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