第32話 シェリルとギルバートの視察(5)

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 ターラさんとティナちゃんを待って、私はソフィちゃんに手を引かれて歩いていく。ソフィちゃんは目をキラキラとさせながら私に声をかけてくれた。それに、私は笑みを浮かべて頷く。  初めの頃はターラさんもひやひやとしていたようだけれど、私が笑みを崩さないためかほっと息を吐いていた。……確かに貴族の中には平民の子供を嫌う者も一定数居るものね。そう思うと、仕方がないのかも。 「ここ、ソフィのお気に入りの場所なの!」  そして、私がソフィちゃんに連れてこられたのは……いかにもな飲食店。店の前には旗が立っており、そこには「本日のおすすめ!」と書いてあった。どうやら、飲食店で間違いないらしい。 「ターラさん。こちらは、どういうお店ですか?」  一応大人の説明も必要だと思ってターラさんに声をかければ、彼女は「パンが有名なカフェです」と肩をすくめながら言う。  お店の前には行列ができており、相当な人気店だとわかる。……カフェ、か。少し、入ってみたいかも。 (だけど、さすがにこの行列に並ぶわけには……)  今日の目的は視察なのだ。カフェだけで時間を潰してしまうわけにはいかない。  そう思って私が落胆していれば、ターラさんは「お持ち帰りもありますよ」と声をかけてくれた。 「あちらの入り口は、店内飲食をされない方が使用するものです。あちらならば、すぐに買えますよ」  どうやら、ターラさんは私がこのお店に興味を持っているということに気が付いてくれていたらしい。それに感謝しながら、私は「じゃあ、お持ち帰りしますね」と言ってターラさんに案内された通りに別の入口へと向かう。
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