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開発者の発見
僕たちが閉じ込めらていた地下室の長い廊下を4人で歩き、出口へと向かった。
クイーン:「なーんでこんなわけのわからないことに、私たちが巻き込まれることになったのよー。もう、わけわかんなーい」
キング:「みんな、本当にすまない」
クイーン:「キングが悪いって言ってるんじゃないわよ。日本政府が私たちや他の人間をバカにしてるのがムカつくのよ」
ジョーカー:「人間、権力を持ったらみんなあんな風になてしまうんでしょうか?」
キング:「まあ、人間の欲みたいなものだね。権力を持つと今までになかったプレッシャーに駆られるとよく聞く。僕はよくわからないけど」
クイーン:「でもあんたもこのメンバーではリーダーじゃない? そういうプレッシャーもあるんじゃないの?」
クイーンは僕に顔を近づけ、煽ってきた。
僕は戸惑いながらも答える。
キング:「いやっ、そんなことはないさ。そういう圧をかけるようなことは僕も嫌いだしね」
クイーン:「そう~。あんた、ホントお人好しよねー」
ジョーカー:「僕はそういうキングさんに憧れてます」
ジャック:「ぼっ僕もですよ」
キング:「2人ともありがとう」
そんなことを話していたら、出口が見えてきた。
出口に着いたことを、スペアに無線で知らせる。
キング:「スペア、出口に着いた」
スペア:「ああ。こちらも把握済だ。キング、お前がくれたこの無線機、GPS付きだとはな」
キング:「なかなかない代物だよ。とりあえず、それぞれの目的地の情報を頼む」
スペアは僕の指示を聞き、それぞれに情報を無線で伝え始めた。
スペア:「まずは政府の闇取引に詳しい奴らの情報を掴んだ。クイーン、ジャックは東京都歌舞伎町の高級スナック店『金道』という店に行け。そこの支配人が政府と深いつながりを持っている」
クイーン&ジャック:「了解」
クイーン:「さて、ジャック。準備はいいはね? 潜入捜査よ」
ジャック:「はっはい! おっ、お願いします!」
キング:「2人とも気を付けてね。何かあったら、無線ですぐ知らせること」
クイーンとジャックは歌舞伎町の店へと向かった。
スペア:「このふざけたアプリ、SPIDER GAMEの開発者は東京都渋谷区の第三シルクビルの地下2Fだ。ただ、地下からセキュリティーがかけられているみたいだ。今分析中だが、2人が到着する前までにはなんとか終わらせておく」
キング:「スペア、頼むよ」
ジョーカー:「スペアさん、仕事が早すぎます」
スペア:「これが俺の仕事だからな。とりあえず、急げ。時間も限られている」
キング:「ああ。よし、ジョーカー。行くよ」
――この日の夜空は月もない、壮大な雲が薄暗い街の明かりをさえぎっている。
ジョーカー:「それにしても、こんなバカげたゲームに耳を傾けた開発者ってどんなイカれたやつなんでしょうね」
キング:「そうだな。もしかしたら、日本政府に弱みを握られていて、仕方なく依頼を引き受けたのかもしれないな。それか、僕たちのように騙されたか」
僕とジョーカーは第三シルクビルへと向かった。
歩いている途中、ジョーカーは何気なく僕の過去について質問し始めた。
ジョーカー:「キングさんはなんでこの業界に入ったんですか?」
僕には奥深い過去がある。その記憶がふと蘇り、話を流すようにジョーカーの質問に答えた。
キング:「僕は気まぐれだよ(笑)」
ジョーカー:「そっそうなんですか?」
うつむく僕の表情を見て、ジョーカーは悟った。
――ジーッ……。ジーッ……。
スペア:「キング。もう少しで現地ポイントにだ。周りの人間に注意して、侵入しろ」
キング:「了解」
ジョーカー:「いよいよですね。キングさん」
キング:「ああ。だけどこれからが本番だよ」
僕とジョーカーはスペアの指示に従い、第三シルクビルへ入った。
するとそこで予測の事態が起きた。
スペア:「キング。まずいことになった。地下2Fのセキュリティだが、コンピュータ制御でこっちからドアロックの解除が厳しい。まずは、そのビルのセキュリティ制御を解除を優先してくれ」
キング:「了解。どうればいい?」
スペア:「まずは、地下1Fのセキュリティ室へ行け。無線で僕から指示する」
キング:「頼む。ジョーカーも一緒に行けばいいよね?」
スペア:「いや、ジョーカーには別行動してもらう」
ジョーカー:「僕は何をしたらいいですか?」
スペア:「ジョーカーにはそのセキュリティ制御の解除ができたら、配線を脱線させる仕事を任せたい。脱線ができれば、あいつらは手出しが一切できなくなる。こちら側を有利にたたせて不測の事態をできるだけ避けたい」
ジョーカー:「分かりました。任せてください」
スペア:「ジョーカーは地下2Fのサーバー室へ行って、僕の指示があるまで待機」
ジョーカー:「了解です」
キング:「ジョーカー、頼むよ」
ジョーカーはうなずき、僕と一緒にエレベーターへ乗り込んだ。
互いに行き先階を押し、エレベータで目的の階へ向かう。
――扉が閉まります。
ジョーカー:「うまくいきますかね?」
キング:「どうだろうね。でも、やり遂げなきゃ僕たちを含めみんな死ぬことになる」
ジョーカー:「そうですね……」
ジョーカーは僕の答えに同感し、手を頭に乗せ、大げさに頭をかいた。
キング:「僕たちは最強チームだから大丈夫さ」
僕はいつものような雰囲気にするために言葉をかけた。
――地下2Fです。
エレベータのアナウンスが流れ、僕は降りる。
キング:「じゃ、僕は行くよ。またあとでね。」
ジョーカー:「はい、お願いします」
ジョーカーは会釈して、僕はエレベータを降りた。
エレベータの扉が閉まり、ジョーカーは地下2Fへ向かった。
キング:「スペア。できるだけジョーカーのサポートを頼む」
スペア:「ああ。任せておけ」
ビル内は真っ暗で非常用電気だけが点灯している。
真っ暗の中僕は、スペアと連絡を取り合いながらセキュリティ室へ向かった。
スペア:「キング、真っ暗でなかなか進みずらいと思うがもう少しでセキュリティ室だ」
キング:「いや、スペアの的確な指示でスムーズだよ」
スペア:「監視カメラもハッキング済みだ。ただ監視員達だけはキングも油断しないでくれ」
キング:「ああ。ありがとう。ジョーカーはどうかな?」
ジョーカー:「こちらジョーカー。もうすぐでサーバー室に到着します」
キング:「ジョーカー、了解」
僕もセキュリティ室の前に到着し、スペアの指示を待った。
キング:「スペア、セキュリティ室に到着した」
ジョーカー:「こちらジョーカー。僕もサーバー室に到着しました」
スペア:「了解。ここからが本番だ。まず、ジョーカーはサーバー室に入り、ドアから見て二つ目のサーバー棚に行ってくれ」
ジョーカー:「了解」
スペア:「キング、セキュリティ室は暗証番号が必要だ。今から伝えるからそれを入力して中に入ってくれ」
キング:「了解」
――暗証番号 7・4・2・9
僕は暗証番号を入力してロックを解除し、中に入った。
キング:「スペア、中に侵入したよ」
スペア:「了解。キングは奥の扉に向かい、そこで待機。足元の人間感知器はハッキングしておいたから、普通に進んで問題ない」
キング:「了解」
ジョーカー:「スペアさん、棚のところに着きました」
スペア:「オーケー。そしたら、下から三つ目のサーバーを引き出してくれ」
ジョーカーはスペアの指示通り、サーバーを引き出し次の指示を待った。
ジョーカー:「引き出しました。次は何を?」
スペア:「キングのセキュリティ解除が完了するまで、その場で待機だ」
ジョーカーはハキハキとした声で「了解です」と答えた。
スペア:「キング、ここからが正念場だ」
キング:「ああ。任せてくれ」
扉の前には正方形型のタッチパネルモニターがつけられている。最新式のセキュリティだ。
スペア:「まず、その扉はハッキングでロックは解除できない。2段階認証でロックが解除される仕組みになっている。一つ目は7桁の暗証番号だ」
キング:「また暗証番号か」
スペア:「大丈夫だ、暗証番号も解読済みだ」
――暗証番号 1・1・4・7・9・0・3
僕は暗証番号を入力した。
モニターにクリアという文字が表示され、次に『blood』と表示された。
この意味は血だ。血液が認証されなければセキュリティがかかり、警報アラームがビル全体に響き渡ることになる。
そうなれば監視員達も大勢ここに来ることになる。
それだけは何としても避けたいと僕は思った。
キング:「スペア! まずいぞ、血液認証が次のロック解除方法だ!」
スペア:「マジかよ。まずいな……」
ジョーカー:「何かあったんですか?」
キング:「血液認証ロックでどうやって突破したらいいか、分からないんだ!」
ジョーカー:「なるほど……。もし誰かの血液のログデータか何かがあれば……」
スペア:「ジョーカー! 今、なんて言った?」
ジョーカー:「えっ? えっと」
無線で連絡を取り合う中、どこからか足音が聞こえた。
キング:「おい! 少し静かに!」
ジョーカーはか細い声でどこから足音がするのか聞いてきた。
ジョーカー:「どこからですか?」
僕は壁に耳を当て、どこから足音がするのか確認した。
革靴を履いている音がする。
カツッ……。コツッ……。
この足音はセキュリティ室に向かってくる音だと僕は気づいた。
キング:「スペア。監視員がセキュリティ室に向かってきている」
スペア:「ハッキングした監視カメラで確認する。くそ! キング、セキュリティ室に監視員が一人向かってきている。どうする?」
キング:「やっぱりか……。くそ」
スペア:「諦めんな。まだ、セキュリティ室まで来るのに2分はかかる。それまでにロックを解除すればいいだろ! それとジョーカー、さっき言ってたことなんて言ったんだ?」
ジョーカー:「確か……。えっ……。えっと」
スペア:「早くしろ!」
ジョーカー:「おっ、思い出しました! 誰かの血液ログデータがあれば……」
スペアはジョーカーの話を遮るように答える。
スペア:「それだ! 今からその血液ログデータを解析する」
キング:「間に合うのか?」
スペア:「やるしかないだろ! ここで負けたらみんな僕たちは終わりだ!」
――監視員到着まで約45秒
スペア:「爆破完了。血液データを入手した! キング、僕の合図でキングの血液をその機械に入れてくれ!」
キング:「早っ! わっ分かった!」
――監視員到着まで約30秒
スペア:「よし、キング。カウントしたら血液を入れてくれ」
キング:「了解」
スペア:「いくぞ、3・2・1」
スペアのカウントダウンに従い、僕は指先の瞬時に歯で噛み切った。
僕の血液は機械に注がれた。
モニターにクリアと表示され、扉のロックが解除された。
――監視員到着まで約10秒
セキュリティ室の扉前に誰かが来た。そして、暗証番号を入力する音が聞こえた。
スペア:「キング! 急げ!」
僕はスペアの言われた通り、その扉の中に入った。
カチャッ……。
監視員:「異常なし」
僕は監視員から逃れることができた。
僕は扉の中に入ったが、あまりの恐怖に息が上がっていた。
キング:「はぁ。はぁ……。危なかった」
スペア:「間一髪だったな」
ジョーカー:「キングさん、大丈夫ですか?」
キング:「ああ。何とか無事だよ。二人とも色々とありがとう。助かったよ」
ひとまず正念場を切り抜けた僕は次のミッションに切り替える。
この部屋には、膨大な量の配線がガラス壁に整理されている。どれが重要なセキュリティ配線なのかわからない。それと、とにかく寒い。
部屋の冷房や空調が良すぎるせいだ。
キング:「スペア。どれがどれかな?」
スペア:「それは把握済みだ。安心しろ」
キング:「それでどれかな?」
スペア:「セキュリティと書かれているモノとか張り紙とかはないか?」
僕はあたりをぐるっと見渡した。
キング:「どーこだ? おっ! あったよ」
スペア:「その中にオレンジ色の配線はあるか?」
キング:「あるけど、3本あるよ?」
スペア:「オレンジ色で黒のラインが入っている配線はあるか?」
キング:「ああ。これね! 2本のブラックラインが入っているやつだよね?」
スペア:「ああ、それだ。それを切る。だが、その前にジョーカーとの連携が重要だ」
ジョーカー:「はい! こちらはいつでもオッケーです!」
スペア:「ジョーカー、さっきサーバーの横側に、緑色の配線があるだろ?」
ジョーカー:「はい。あります」
スペア:「それをキングの配線と同時に切ってもらう」
ジョーカー:「了解です」
スペア:「よし、キング、ジョーカー。僕が合図したら2人とも配線を切ってくれ」
キング:「了解」
ジョーカー:「了解です!」
スペア:「いくぞ、3・2・1」
――ブチッ……。
僕とジョーカーはスペアの合図で配線を切った。
スペア:「よし、これでセキュリティ解除ができる」
スペアはこのビルのコンピュータをハッキングし、セキュリティから全てスペアの配下になった。
キング:「スペア、どう? うまくいったかな?」
スペア:「ああ、全てハッキングしてこのビルは僕の思いのままだ」
ジョーカー:「やっぱりすごいですね。スペアさんは」
キング:「ジョーカー、君もだよ。さてと、これから開発者のところに行くよ」
スペア:「キング、監視員も気にしなくていい。監視員達も監視室に閉じ込めておいたから、そのままジョーカーがいる地下2Fに行って合流しろ」
キング:「了解。」
僕はまたエレベータに乗り、地下2Fへ向かった。
目的の階に着き、エレベータの扉が開いたらジョーカーが待っていた。
ジョーカーは僕の顔を見て、グッとポーズをしてきた。
ジョーカー:「ナイス連携でしたね!」
キング:「うん! さあ、ここからだよ」
ジョーカー:「はい!」
スペア:「いい雰囲気で盛り上がっているところ申し訳ないが、開発者はその階の一番奥の部屋にいる」
キング:「あの部屋だね。ロックはかかってる?」
スペア:「今はかかっているが、問題ない。2人が扉前に着いたら、僕がロックを解除する。」
キング:「了解。よろしく頼むよ」
僕は奥の部屋に向かおうと歩き始めた時、ジョーカーは壁側に手を置いて立ち止まっている。
キング:「ジョーカー、どうした? 何かあったか?」
ジョーカー:「いえ、ちょっと疲れたみたいで……」
キング:「そっか。でももう少し頑張ってくれ」
ジョーカー:「大丈夫です。すみません」
僕はジョーカーの前を歩き、ジョーカーも僕に続いて奥の部屋に向かう。
しばらくすると、奥の部屋にたどり着いた。
ドアノブの横に指紋認証機が置かれていて、指紋でこの部屋のロックが解除されるみたいだ。
スペア:「ここは僕が解除する。解除したら、僕はクイーン達のサポートにまわるよ。」
キング:「ああ。ありがとう」
スペアが無線で話した後、ロックが解除された。
――ピーッ……。カチャッ。
ロック解除されたことを確認した僕達は、静かに扉を開けた。
部屋は汚れ一つない真っ白な壁で、部屋の真ん中にベットがあり、その隣にパソコンとモニターが置かれていた。
だが、開発者の姿が見当たらない。
ジョーカー:「開発者はどこですかね? それにしても殺風景な部屋ですね」
キング:「この部屋にいるのは間違いないけど……」
僕はそう言いつつも開発者がどこにいるのか、分かっていた。
ベットのシーツを思いきり引きちぎった。そのシーツの中から男の子が出てきて、部屋の端のほうへ逃げて行った。
僕は予想外過ぎて思わず「え?」と意味のない言葉が出てきてしまった。
ジョーカー:「マジですか! こっ子供じゃないですか!」
キング:「うっうん。まさか子供だったとはね」
部屋の端で身を潜めている開発者が僕たちを警戒して睨んでいる。僕は開発者の元へゆっくり近づき、話しかけた。
キング:「僕はキング。君の名前は?」
開発者はまだ警戒をしていて、顔の側面を壁にくっつけた。
キング:「怖がらなくていいよ。怒らないから」
開発者:「っ……。あの……」
ジョーカー:「ん? なになに?」
キング:「いいよ。ゆっくり話してごらん」
開発者:「ぼっ僕が、作りました」
キング:「このSPIDER GAMEを作ったことかな?」
開発者:「はい。僕が作りました」
開発者は恐れるように答えた。
キング:「そっか。名前は?」
開発者:「侑大」
キング:「侑大くんか。いい名前。」
ジョーカー:「侑大くんは、何歳?」
侑大:「13歳です」
キング:「中学1年生かな?」
侑大:「はい……」
ジョーカー:「13歳でこのアプリを作ったの? すっすごいなー(笑)ちなみにお父さん、お母さんは?」
侑大:「お母さんは小さい時に死にました。今はお父さんと暮らしています。でも……。」
キング:「今、お父さんどこいるの?」
侑大:「黒いスーツを着た人たちにどこか連れていかれました。今どこにいるのかもわからなくて……。僕もこんな部屋に入れられて、このアプリを作れって言われて……。作れないなら殺すって……」
侑大は泣きながら答え、目をこする。
ジョーカー:「ひどいな……。大丈夫だよ。キングさん、どうすれば?」
キング:「侑大くん、どうやってこのアプリ作ったの? どうしてプログラムが組めるのかな?」
侑大:「よくお父さんにパソコンを教えてもらっていたんです。お父さんはパソコンがすごく得意で、よくプログラムの話とかしていました」
キング:「そっか。ちなみにお父さんの名前は?」
侑大:「城田一彦です。ただ……」
キング:「ただ?」
侑大:「黒いスーツを着た人たちは、お父さんのことをレッドイーグルって読んでいました」
僕はその名前を聞いて驚いた。
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