科学を魔法で模倣する(仮)

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{第四章・文字が} 木でできた短い橋を熱中症で倒れないようにゆっくりとした足取りで歩いていく、門の前にいる門番は納得のいかない顔をしていた、あの許可をくれた優しい目つきをしている門番に向いていない門番の彼は意外と古参で、ここの門番界隈の絶対的なものを持っているのかもしれない。たとえこの門番が納得できていなくても私はしっかり許可をもらっているので社交辞令の愛想笑いなどせずに自信をもって門をくぐった。 見かけよりこの壁は分厚く数秒ほど歩いた、暗くじめじめしていて心地よくはない、外よりいいのはたしかなのだが。 門を抜けた先には、趣を感じる石造りの建物が立ち並んでいた。俗にいう西欧建築というやつだ、石で舗装された道、木で作られたリアカーを使って荷物を運ぶ人たち、屋台のようなもので食べ物やきれいに彫られた木のお守り、アクセサリーのようなものを売る人たち、ドアにノックをしている徴税人?のような人、なおさら日本の光景ではない。 「もう考えるのやめようかな・・・」そんな声がこぼれた。 実際問題そんなこと考えるよりも先に水分をどう確保するのかを考える必要がある。噴水とかがあればそこから‥‥いや、衛生面も考えないといけない。世知辛い話だがワクチンに頼りっぱなしの免疫力プリン以下の現代人がこんなところに来たら速攻細菌やウイルスでお陀仏…小説のようにはいかないのだ。辛い。 夏なら蚊もいるし伝染病…いやここは四千四十二年なのだろう?根絶宣言された感染症はもう心配いらないのではないか?わからない、そんなことを考えながら私は当てもなく歩いた。 正直もうだめかと思った。足はふらついて姿勢は崩れ視界が安定しないそんな状態だったのだ。 「君、大丈夫かい?」 救いの手が差し伸べられた! 「水を…もらえ…いただけませんか?」 「もちろん、というかその姿を見て断る人はいないでしょうに」少し笑うことが出来た、彼の片手にはすでに水の入った容器があった。 「どーぞ」言い切る前に私は彼の手から水を奪い取り、口からあふれん勢いで水を飲んだ。飲み干した。よかったよかったと彼が言うのが聞こえる。水を奪い取ったことを気にしてはいないらしい、「すいません、水を飲むことが長年の夢だったもので」理由もなくいってしまった。 「別に嘘ついて弁解する必要ないのに。癖になる前にやめときな」 なんだか今日は論破される回数が多い気がする。熱中症だからだろうか。 その後私はだまって姿勢を直して感謝を申し上げる準備をしていた。 「ありがとうございます」とお辞儀をして、頭を下げた時に汗がしたたり落ちるのを感じた。 「どういたしまして」彼はそう言うと華麗に去っていく…わけではなく、その場に立ち尽くしている「もっとほかにあるでしょう?」そんな顔で微笑みながら。 正直私も気づいていた、このままだとこの人から水を受け取った後にまた脱水になって最悪死ぬ、お金もない(財布はあるが硬貨、紙幣はこの世界で価値がない)から泊まる場所も確保できない。野宿なんて論外だ、した暁には劣悪な衛生環境で無事生還しました!なんてことは起きない。この窮地を救えるのはたぶん彼しかいない、こんなよくわからん奴に水を持ってきてくれて、抵抗なく話してくれるそんな逸材はこの国で彼ぐらいしかいないだろう。 泊めてもらう、それしかない。 それにしても水をくれたこの人はとても計算高い、私を見てここまで考えついてしかも私にチャンスを与えてくれるとは! 私は彼に前記したことをすべて述べ、彼の想像する答えにとても近いであろう返答をした。 「…えっ?」 どうやら違ったらしい。 話を聞くと彼は私の服装を見て異国の人だと思ったらしくこれで恩を着させて金を徴収する予定だったそうだ、普段は「ここでしか飲めない水なんです!」とか「ここでしか取れない虫なんです」とかもっと凝ったもので巧みに旅人や観光客をだましていたとのこと。聖人のように見えた彼が今ではただのずる賢い悪人にしか見えない。あの誰もが安心するであろうおっとりした声も口調もいまは面影も残っていない、彼は今、だまそうとした相手に今までしてきたことを自慢するように白状し、免罪を乞うように私にしようとしたことを話している。 とりあえず彼が私に水をくれたことは感謝しているし、免罪なんてどうでもよい。逆に私が彼に乞うのは永続的に家に泊めてしい、これだけだ。 お金に余裕がないからこのようなことをしているのだろうが、私はここで食い下がるわけにはいかない。もちろん話したら「無理」と断られた、さらに条件を付ける、「働いて安定してお金が手に入るようになるまで」「家事は私が担当する」「もちろん家賃も払う」。 ここまでくると私の必死さが彼にも伝わったようだ、彼は顔をしわくちゃにしながら考えている「う~ん」と言いながら。これ以上条件を付けるのは私も難しい、心臓をドクドクさせながらまった。そして至った結論は。 「わかった、泊めてやろう」だった。 深く息をついたそれと同時に「よし」と発した。 彼は腕を組んでまだ何かを考えていた、この決断が良かったのか悪かったのかをまだ考えているような様子だった、ここで考えを変えられても困るので、私は彼にこの国のことについて教えてほしいと頼んだ。 彼は肯定しながらも疑問をぶつけてきた。 「どうして君はさっきからここを国と言っているんだい?」 「国ではないのですか?」 「いや、国なんだけど、服装はあれだが、顔は見たかんじ君は日本人だろ?日本のことはすでに知っているのでは?ここのことについてってことなら何でも教えてあげるよ」 門番の人が懐疑的な顔をしていた理由がようやくわかった、ここは国ではなく都道府県の一つだったのだ。ということはここは日本の東京都阿河川市南区だ。当たり前なのにてっきりここだけ独立した国だと錯覚していた、先入観であろう。 柱にのみ石を使い壁はモルタルで塗り固められていた家や壁すべてが石でできていた家、籠をもって買い物に行く人、楽しく駆けっこいる子供たち、きれいな服を着ている人たちなど色々目新しいものがあった。ところどころ日本語で書かれた看板や壁の落書きがあったがそれらは私でも読めるものであった。 「スタジオパンケーキ?」なんともおいしそうな名前のお店の広告がそこにはあったが、これはスタジオなのかそれともパンケーキ屋さんなのか?それによく見てみると下の方に「 (ステレオ)」とも書いてあった、これの理由を彼に聞いてみたところ 「なるほど、君はスタジオ派なんだね」と言われたが私が頭の上にはてなを浮かべていると気付いた彼はこう続けた。 「昔は“劇団”という意味でどちらかが使われていたんだ、ずいぶん昔の言葉だからどちらが正しい意味かが今議論されている、学校でもステレオ派とスタジオ派の二極化が絶えないね」 スタジオ、ステレオ、そこまで似ている文字には見えないが、まぁ日本人だし二千年もたっていたら確かに受け継がれる言葉の意味は変わるかもしれないだろう。 私がそれについて考えていたらついさっきまで私と立ち話をしていた彼はまもなくどこかに行ってしまった。 彼の靴底がコツコツと音を立てている、私の靴底も音を鳴らそうと必死に努力しているがそれは実現しなかった。 さらに彼に町のことについて教えてもらった、ここが日本の中でも栄えている町の一つだということ、そして昔の人の言伝によると大昔に科学文明が低迷したこと、便乗するように文明が崩壊するほどの大災害が起こったこと、それによって日本は本来の姿でなくなってしまったこと、そこから再復興し今の姿になったこと。 なぜ自分がここに飛ばされたのかは原因不明だが最後に教えてくれた文明が衰退するほどの大災害とは何か因果関係、つながりがありそうだった。 すぐ先に掲示板を発見した、紙がたくさん重ねて貼られている、一番下をめくって見ると、 {ゴミがあふれている、掃除をしろ。寺子の里さんより} {自分の敷地だろ?自分でしろ。ゴリラタイムさんより}(この記事にはたくさんの色の付箋が付いている) {それってあなたの感想ですよね?。寺子の里さんより} {ちげぇよ馬鹿が。ゴリラタイムさんより} この先も馬頭と論争が続いていた。 元祖インターネットがそこにはあった、これが本当の2チャンネル(現5チャン)であろう。 「やっぱりきになるよなぁ」彼が掲示板から目を離さない私に言う。 「これも言伝を残してくれた人たちの時代の物の再現らしくて、当時からこういう人を侮辱したり、考えなしに言葉を発したりすることが問題になっていたそうだ」 間違いなくインターネットのことだろう、このような形で再開するとは見ず知らず、驚いた。 私が驚いているときに彼は私に「ここでしか使われていない言葉もあるんだよ、知ってる?」 「ンゴ、とかワイとか?」 ネットスラングというものだ 「よく知っているね、たまに話し言葉でも使われるけど大体ここでしか使わないかな」 違う県から来ているというならなおさら驚いただろう、さすがに当時のようにはいかない拡散力はあくまでこの国の中のみ。ここでしか使われていない言葉や逆に他の場所で作られた言葉もあるはずだ。 そのまま彼の顔を見ずに視線を左にずらした。 新しい店の広告、迷子のチラシ、塾の広告、魔術学会の勧誘広告、迷惑行為の… 「魔術学会?」思わず口に出てしまった。 「どうしたんだい?」彼が私に問う「魔術学会?君の所にはないのかい?」 「魔術って…魔法のことですか?」 「そうだけど‥‥」 そう言ったあと私はまた考える人になってしまった。私が考える人になってしまったことで顔をしかめた彼は内ポケットから一本の木の枝、否、木の杖を取り出して私の目の前に持ってきて握る力を強めた。と思ったら、粒上の氷が出現した。 この世界は私を今日あと何回唖然とさせれば気が済むのだろうか。 また私はそれに見とれて立ち尽くしていた。 「第五章・魔法か科学か」 私は誠の科学屋で科学に基づいたことしか信じない、科学で一見説明できない現象には必ずトリックがある、もちろん幽霊、魂なんて信じない、そのような精神でここまで生きてきた。がなぜかここにやってきて科学で説明できそうもないことがたくさん起きていて、そして今も目の前で行われている、ここの文明レベルからして夏に氷を用意することすら一筋縄ではいかないだろうし、まず私は杖の先、半径七センチ間から氷が出現したことを目の当たりにしている。私は再度フリーズしてしまった(氷とフリーズを掛けているわけではない)。 その間彼は私の頭にその出現している氷をかけてくれていた。 彼のしかり顔をよそに私は気合いを入れて歩き出したそれと同時に彼にこう伝えた 「あなたのお家はどこですか!」もう正直おなかいっぱいだった。 私は今の言葉を声量を多めで言ったためか彼は少し引いていた、そして冷静に 「わかった、連れて行くから」そういった 彼と一緒に歩いている時、彼は異様に杖を持っていた方の手を何かを振り払うように振っていた、何故手を振っているのかを訪ねるとまた眉間に皺を寄せた 「このことについて本当に知らないのかい?」私は肯首した こうして彼の口から説明されたこれらの事柄は私の興味をとてもそそるものだった。 「これは魔法の杖だ、言伝の中にあった“物語”という読み物の娯楽の中で登場していたからこのような名前になっていて、普段私たちができないようなことを実現させてくれるんだ」 まったく私の魔法の像と解釈一致だ 「もちろんタダで魔法が使えるわけではなくて、必ず自分の体にあるものが消費されるんだ、私がさっき氷を出現させただろう?これをした代償として私の手が今ものすごく熱いんだ」 なるほど等価交換なのか 「ということは冷やすだけではなくて温めることもの可能なのですか?」 「もちろん出来るよ、だけど」 だけど? 「冷やすも温めるも使いすぎたり、一回で莫大な量をこなそうとすると使用者が死んでしまうんだ、少し温めるだけでも体がちょっとづつ小さくなっていくんだよ」 なるほど。よくわからない、体が小さくなる? 「だから正直あんまり利用価値がない物なんだよね、でも持っておいて損はない、今みたいに氷を出して冷たいものを飲むときとかに使えるからね」 とりあえず一通り説明を受けたが、疑問はやはり残る、特に“体が小さくなる”についてもっと知りたい。 「体が小さくなるって具体的にどういうことですか?もっと言えば‥体のここが小さくなる‥とか」 「いや、本当に言葉のとおりなんだよ。がりがりになってしまうんだ」 がりがりになってしまう、つまり脂肪が燃焼するってことなのだろうか。 脂肪1gに対して9キロカロリー、1カロリー=水1㎤を一度上げるために必要なエネルギー、確かに過食できないこの世界ではこれを使用することは危険かもしれない、でも肥満気味の現代人(わたしが元居た時代)にこれがあったらきっとこれは社会現象になっていたであろう 「それを貸してもらえませんか?」 「別に大丈夫だけど、私は心配だ」 「何がですか?」 「絶対にそれに触ったことないでしょ?」肯いた 「結構練習いる代物だから、気を付けて」 その言葉を聞き入れて私は慎重に杖を扱った、「自分がしたいことを頭に浮かべるんだ、それが可能だったらその杖がそれを実現してくれる」とのことだった。私は右手にしっかり持った杖を上に向けて頭の上にさっき彼がしてたように氷を降らせようとした。 どのように想像すればよいかよくわからなかったのでその時にとっさに浮かんだ霰を想像してみることにしたのだ。 暗い雲に覆われているそれから氷が落ちてくる姿を想像する ドックン、心臓の音が聞こえた後づんっと体の中に流れている養分のすべてが杖の方に持っていかれるような感覚があった時間が止まったみたいに私の意識は杖の方へといざなわ得た、と同時に私の頭の上に氷が降ってきた! その瞬間、私は立ち眩みを起こしかのようにその場に野垂れてしまった。 頭の上に大きい霰が当たる音とともに痛みが伝わってきた。 「言わんこっちゃない!」彼が私を支えながら言った。 どうやら想像していたものが少し大げさだったらしい。 「いきなり自分の頭の上に霰を起こす奴がいるか!天気を変えるなんて自殺行為をするやつは君以外見たことないぞ!」もしかしたら現代人でなかったら死んでいたかもしれない。 そのまま彼につられるように、いや引っ張られて彼の家まで連れて行ってもらった、いや連れてかれたのだった
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