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「それじゃあ、今から人間界に行って悪霊をわしの所まで連れてくる仕事をする奴を決める」 ここは地獄。 獄卒達が制裁を盾に地獄の死者を痛ぶり、死者が泣きわめかせる場所。現世のやつらからしたら絶対に行きたくない場所だろうが、俺(鬼)からしたら暴れても文句を言われないなんて楽園のような場所だ。 俺は見る専なんで、さっきまでその様を見物していた。 ここはそんな日々をなんの狂いもなく繰り返している。一言で言うと平和だ。 俺はそんな毎日を退屈だとか飽きたとか思ったことは無い。 寧ろ優越感に浸り、とても気分がいい場所。 だが、今日は少し違う。数年に1度行われる地獄長会議。 各役職のリーダーが集まり閻魔の話を聞くだけの会議だ。 この俺、酒呑童子は優越な時間と睡眠時間を割いてそんな会議に駆り出されていた。 これはとても退屈なもので早く帰りたい。 「今日から人間界に行ってもらう者なんだが、わしが勝手に決めたが良いか?」 向かい合わせになった2つの机の端にいる閻魔がしゃがれた声で告げた。 あー。早く帰って寝たい。どうせ下級獄卒達だろ? 俺はあまりの眠たさにこくっこくっと首が座ってない赤子のように揺れていた。 「1人は茨木童子」 「はっ!」 閻魔の使命に1人の獄卒が気持ちいいくらいキレっキレの返事をした。 ほえー。茨木行くのか。どんまいじゃん。てか、まだ朝の2時かよ。辛っ! 俺は小指で鼻をほじりながら壁にかかってる時計を確認してボケっとしていた。 「もう1人は……」 まだいんのかよ。早く終わらせろよ、クソジジイ。 「ーー酒呑童子だ」 「……は?」 思わぬ指名につい間抜けな声が出てしまった。 「は? ではない。返事は?」 「あ、はい。でもなんで?」 「なんでって、なんとなくだ」 なんとなくって……こいつ…… 普段は下級の奴らがやっている仕事をてきとうな理由で任され納得がいかない。むしろプライドが傷つけられ、ふつふつと怒りが込み上げてくる。 「他の獄卒達にやらせればよくね?」 「こいつらも休みたいだろ。なぁ?」 閻魔が各役職のリーダーの方を向くと、目を輝かせて頷いた。 ……あとで、ぶち殺す。 「この仕事を断ったら、100年酒禁止にするがどうする?」 淡々と俺にとっては1番怖く、平和じゃないことを言われて一気に目が覚めた。 100年っ!? それはダメだ…… くっそぉ……釣り方がずりぃ…… 「わぁったよ! やればいいんだろ! やれば!」 「決まりだ」 俺の仕方ない了承に閻魔は満足そうに微笑んだ。 そして、この日俺と茨木童子は人間界に降りたつのであった。 俺の秘密基地に大量の酒を隠して。
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