愛しい人は⑦

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 地下鉄を降り地上へ出ると、あのカフェが見えた。そのまま多恵子は急ぐ。  雪が染めていたこの通りも、今はポプラやプラタナスの緑で彩られていた。その木陰に藤岡画廊。店のガラスドアをそっと覗くと、一目で見つけた。奥のギャラリーにある青と白の裸婦画。 「多恵子さん、待っていたんだよ」  多恵子を見つけ、藤岡氏がドアを開けてくれる。    白い裸婦と青い裸婦。  どちらも願ったとおりの絵で、多恵子は微笑まずにいられなかった。  あの雪の日々を過ごした女の顔。そして青いカンバスからは鮮烈な潮の香。  あれから先生がどうしていたか、多恵子に伝わってくる。その匂いは先生の日常になっていると知る。  海が見える窓辺に裸婦、イーゼルに向かっている画家の横顔が見えた。      ■ 裸婦/完 ■  
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