99人が本棚に入れています
本棚に追加
76
JR中央線特別快速高尾行きが新宿を発車してから、私は電車に揺られながら、また距離を取って沢村と見知らぬ女を見張った。
一体どこへ行くつもりなのか?
このカップルに振り回されるのには、もうかなりうんざりしていたので、ただのデートをしてるだけなら、あの見知らぬ女がいる前であろうとも、私は沢村に直談判して何がどうなっているのか事情を聞こうと決めていた。
特別快速はしばらくして40分ぐらいで高尾駅に到着した。
こんなところに何の用があるのか、不思議で仕方がなかったが、終点の高尾駅に電車が到着すると、二人は当然電車を降りて、また改札口にではなく、急いで別のプラットフォームに向かって行った。
どうやら二人は、JR中央本線大月行きに乗り換えるようだ。
大月行きはすぐにプラットフォームに滑り込んできたので、二人は早速電車に乗り込んだ。
私もうんざりしながら電車に飛び乗った。
何処に行きたいのかわからないまま、この二人に振り回されていることに、いい加減我慢の限界にきていた。
沢村と見知らぬ女は、今日は妙に二人とも黙りこくって静かに電車に揺られていた。
昨日は妙にはしゃいでいるように見えた沢村が、今日は不思議に沈黙している様子だったが、二人が喧嘩でもして、仲違いしているようには見えなかった。
だいたい電車を乗り換える時、相変わらず二人は仲睦まじく手を握り合って歩いていたし。
しばらく電車に揺られていると、50分近く走行した後、もうじき終点の大月駅に到着するという車内アナウンスが聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!