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富士急山梨バスの河口湖・西湖周遊バスに乗り、しばらくはこのバスに揺られた。 一番前の二人席に沢村と女は座り込んだまま、また黙りこくっていたが、私は一番後ろの席で沢村に顔を見られないよう俯いた感じで座っていた。 だがしばらくして、沢村と女が座る席の少し後ろに、一人他の乗客がいたのだが、その目付きの鋭い男が、さっきから頻繁に私の方を振り返っては恐い目でこちらを凝視していることに、私はようやく気がついた。 角刈りのような短髪に白いものがまばらに混じっている中年男、というよりは壮年に近いその男は、私の方をかなり怪しい様子でチラチラと見ては、その鋭い眼光でこちらを露骨に睨みつけている様子だった。 ひょっとして、尾行がバレたのか? 一瞬、そんな気がした。 実はこの男は沢村の知り合いで、バスの中で沢村と女を監視している私に気がついて、警戒し目を光らせているのではないか。 それしかこんな見知らぬ男に睨みつけられる筋合いなどないので、段々そんな気がしてきた。 すると男は、急に自分の席を立って、また二つほど後ろの席に座り直しながら、すぐに私の方を露骨に睨みつけてきた。 つまり少し私の方に、さらに近寄ってきたのだ。 私は男の鋭い眼光を逸らし、顔を俯かせたまま警戒して、その場に座り込んでいた。 もし万が一、男がいきなり襲い掛かってきたら、すぐに臨戦態勢を取れるよう、私は頭の中で護身術のパターンをシミュレーションした。 ジャケットの内ポケットに忍ばせてある小型の催涙スプレーを、密かに手に握りしめた。
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