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私は自然道を歩きながら、道の脇にも目を凝らして、沢村と女がいないか注視した。
すると脇道に、キノコらしきものがいくつか生えているのがやたらに目についた。
「あれ、キノコですか?」
私はつねさんにそう聞いた。
「ええ。樹海にキノコは多いですよ。でも採ったりしたらダメですよ。ほとんどが毒キノコですから」
「え?」
自殺で有名な場所というだけでなく、毒キノコの生息地でもあるのか。
樹海は実際に歩いてみると、散策用の道もきちんと整備されているし、緑も美しく、いかにも国立公園の観光地という感じで、普通に観光として散策するには全く問題のない場所に見えるのだが、その狭間にちょくちょく危険な棘が散りばめられているという場所なのかもしれない。
それに自然道を進むほどに、怪しい森の気配も強く感じられるようになっていく。
地盤が溶岩なため、木々は根が張れず、幹が太くなると倒れることがあるらしい。
だからか、木はどれも細くて高く、その為、似たような木々が繁茂していて、それが独特の不気味な気配を醸し出している。
この辺りには、自殺防止の為か「命を大切にしよう」というような文面の、自殺防止連絡会の看板が立て掛けられていたり、"この先あぶない 入ってはいけません"と書かれてある、縄で通行止めにした場所が見受けられた。
「売店のおばちゃんの読みはほとんど外れたことがないから、たぶんあの2人は、この通行止めにした向こうの禁止区域に入り込んでる可能性がありますね」
つねさんはそう言うと、不意に通行止めの綱をひょいとこじ開けて、進入禁止区域に入り込んだ。
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