90

1/1
前へ
/276ページ
次へ

90

古い朽ち果てたような小屋の前まで行くと、つねさんはおもむろに中を確認した。 「誰かいますか?」 私はすぐにそう聞いた。 「いや、元々ここはただの空き家だから。でもここに誰か入り込んでないかと思って…」 つねさんはそう言って、さらに小屋の中に入っていったので私も後に続いた。 小屋の中はいかにも雑然とした、まさに廃屋そのものの内部といった感じだったが、人がここに居たような形跡はあまり感じられなかった。 「ここには入り込んでないようだね」 つねさんがそう言って外に出たので、私もそれに続いて一緒に外に出た。 外に出て、すぐ崖の方を見た時、また不意に、何か奇妙に白っぽい塊のようなものが目に入った。 あれは何だ? 私は気になって目を凝らした。 「どうしました?」 ひたすら一点を凝視してる私を不思議に思ったのか、つねさんがそう聞いてきた。 「あの白い塊は…?あれは何ですか?」 私がそう尋ねると、つねさんも白い塊の方に目を向けたが、ただ不思議そうな顔をするばかりだった。 「わかりません…。あんなの見たことない…」 そう言うとつねさんも、白い塊の方を凝視し始めた。 私はここで目を凝らしていても埒が明かないと思い、白い塊の方に歩き出した。 「あ、待って…」 そう言って、つねさんも私の後についてきた。 徐々に白い塊がある場所に近づきつつあったが、するとその刹那、白い塊は急にこちらから離れ、遠ざかっていくように見えた。 動いているのか…? あれは一体…?
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加