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「あんた一体何なの?」
私は単刀直入に捕まえた女にそう聞いた。
だが女は妙に焦点の合わない目つきで、空を見上げるような顔をしていた。
「何であんたと沢村さんが心中するの?沢村さんには…」
私はそうまくし立てながら、また女の顔を睨みつけたが、やはり女は、ただひたすら不思議な目つきで空を見上げるばかりで、ただただ奇妙な違和感ばかりが際立った。
何がどうなってる?
だがその時、不意に、
「催青は上手くいったのに…」
と微かに呟く女の声が突然聞こえた。
「さいせい…?」
何のこと?
「何を言ってるの?」
私は再度、女を掴んで睨みつけた。
「一夜包みで大丈夫なはずなのに…」
女はか細い声でそう呟くと、妙に寂寥に満ちた顔をした。
一夜包み?
一体何のことだ?!
だが女はそれだけ言うと、固く目を閉じて沈黙してしまった。
私は、そのまま女を、怒鳴りつけるように詰問し続けたが、女はただただ黙して、まるで死んだようにうなだれるばかりだった。
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