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***
つまり。
それ、はそのビルの隙間でずっと誰かを待っていたわけである。
自分に気づく誰かを。
魅了できる誰かを。
そして、己と――代わってくれる誰かを。
「ふー、ふー、ふー……」
幼児さえ入れない狭い隙間に、生きた男子高校生が入れるはずはない。
みしみしと全身の骨を砕き、ぐしゃぐしゃに潰れた体で。僕は今日も、じっと隙間の向こうの光を見る。荒い息を吐き、何年になるかもわからぬ苦痛に耐え続けながら。
「ふー、ふー、ふー……」
さあ、誰でもいいから、気づいておくれ。
この金色の眼は、とても美しいだろう?
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