(おはよう)

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(おはよう)

どうしてだろう。 一年間の春夏秋冬は、日照時間の長さが違う。 なぜだろう。 午後7時を過ぎても公園で遊ぶ子供達の声が響く夏。 早く陽が落ちる冬は、夜が来るのがとても早く感じる。 髪で隠しきれない耳が、紅色に染まっているのを想像した。見えなくてもこの寒さで、耳の色は予想つく。触るとひんやりと、冷たさを感じた。 もうマフラーが欠かせない時期が来るのか。 冬がくる。冬が来た。 夜が来るのが早くなる。 「早く・・・、早く、」 制服を着たわたしは、走っていた。絡まりそうになる足を懸命に動かした。前へ、前と。 自分が通っている高校は、家から一時間弱ほど時間がかかる場所にある。 毎朝、朝は午前七時半に家を出て登校。そして、帰宅時間は午後六時前後。通学路の交通手段は、電車と徒歩である。 例えば今日の帰り道。学校から徒歩で15分ほど並木街を歩き、最寄り駅に着く。そこから20分ほど電車に乗り、五つ目の駅で降りる。そして到着した駅から徒歩10分ほど住宅街を歩くと、私の家に着く。 学校周辺は、通勤・帰宅の時間帯に車が何台も通っている街で、人通りが多い。だけど私の家の近くの住宅街は少し静けさがあるところだ。 部活をしておらず、習い事もしてない。放課後、一緒に帰ったり、一緒に寄り道して遊ぶ友達もいない。 学校が終わればすぐに帰る準備をする。 それにはひとつ、理由があった。 それは。 ーーーーー灯がおちて、夜が来るまでに、早く帰らなければならない理由があるから。 帰宅時間の一分一秒の世界が、私にとって重要なことである。 だから、そう。 あの日も学校の授業が終わるといつも通りに帰宅の準備をした。 …だけど時間計算外のことが起きたんだ。
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