【3】

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 ピンポーンと、玄関のドアホンが鳴る。  先生か!?  と思うも、わざわざブザーを鳴らすわけが無い。  ドアホンの電話を取ると、 「こんにちは、担当編集の、小山です」  と、男性の声。 「少し早いですけど、進行具合、どうですかー?」   「ちょっ・・・早いんだけど」 「先生、いないし・・・」  と慌てつつも、玄関ドアを開けた。  二人で迎え入れる。 「あの、ちょっと今、先生・・・り・・・リフレッシュに外に出てまして、ほとんど完成ですし、すぐに戻ると思いますっ!!」  と私が対応している間に、永野さんは先生にメールを打つ。 『担当の小山さんがいらっしゃいました!!そろそろ限界です、戻って来てください!!』  小山さんは差し入れにドーナツ詰め合わせを持って来てくれたので、私は紅茶を入れて、 「どうぞ・・・」  と差し出して、 「永野さんもどうぞ」 「ありがとう・・・」  と渡すも、ガチャリと、バランスを崩して紅茶をこぼす。  しかも、原稿の上にっ!! 「あああっ!!」 「布巾・・・いやとりあえずティッシュ!!」 「大丈夫、大丈夫、少しだし、 紅茶だから印刷に出ない!!」 「てか拭いたらほとんど汚れて無いから大丈夫!!」  と、バタバタ慌てる二人。 「大丈夫ですか?」  と小山さん。  そして、一通りバタバタが落ち着くと、気まずい沈黙。  先生の担当さんと、特に話す事なんて無いし話題も見つからない。  小山さんが、 「夢野先生、どこまで行ってらっしゃるんでしょうねー・・・」  と。  そうだ、私たちの原稿じゃ無いのにっ!!  指定された仕事はもう終わっていたし。  もはや限界か・・・。  と思ったその時、  玄関の鍵が開く音がする。
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